平成29年(行ケ)10117<鶴岡>【マイコプラズマ・ニューモニエ検出用イムノクロマトグラフィー試験デバイス】
*引用文献に製造可能な程度に記載がなく、29-1(3)「記載された発明」に該当しない
=H3(行ケ)8【光学活性置換ベンジンアルコール】
=H19(ワ)26761【アカルボース】
(判旨抜粋)
特許法29条1項3号の「刊行物に記載された発明」は,当業者が,出願時の技術水準に基づいて本願発明(本件特許発明)を容易に発明することができたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから,当該刊行物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない。また,本件特許発明は物の発明であるから,進歩性を検討するに当たって,刊行物に記載された物の発明との対比を行うことになるが,ここで,刊行物に物の発明が記載されているといえるためには,刊行物の記載及び本件特許の出願時(以下「本件出願時」という。)の技術常識に基づいて,当業者がその物を作れることが必要である。
かかる観点から本件について検討すると,引用例1の記載及び本件出願時の技術常識を考慮しても,引用発明1のデバイスを当業者が作れるように記載されているとはいえない。理由は以下のとおりである。
…たとえ様々なモノクローナル抗体を得る技術自体は周知技術であるとしても,本件取消決定が認定した引用発明1のラテラルフローデバイスは,引用例1の記載及び本件出願時の技術常識から,直ちに作ることができるものとはいえない。したがって,引用例1に引用発明が記載されている(あるいは,記載されているに等しい)ということはできない。…引用例1の実施例7の記載は,患者サンプル(臨床検体)からのマイコプラズマ・ニューモニエの検出が可能であったことを示すものとはいえない。かかる観点からも,引用例1に引用発明が記載されている(あるいは,記載されているに等しい)ということはできない。 http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/110/088110_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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