平成25年(行ケ)10346【水晶発振器の製造方法】<石井>

 

*明細書中で、2つの段落に独立に記載した事項を併せた追加⇒新規事項追加

⇒訂正要件×

 

「各記載に係る構成の態様は,それぞれ独立したものであるから,そこに記載されているのは,各々独立した技術的事項であって…」

 

 

【(訂正後の)請求項1)】第1音叉腕の上下面の少なくとも一面に,中立線を残してその両側に,前記中立線を含めた部分幅が0.05mmより小さく,各々の溝の幅が0.04mmより小さくなるように溝を形成する工程と,第2音叉腕の上下面の少なくとも一面に,中立線を残してその両側に,前記中立線を含めた部分幅が0.05mmより小さく,各々の溝の幅が0.04mmより小さくなるように溝を形成する工程と,…。

 

 

(判旨抜粋)

…本件特許明細書には,【0041】に,中立線を残して,その両側に溝を形成し,音叉腕の中立線を含めた部分幅W7は0.05mmより小さく,また,各々の溝の幅は0.04mmより小さくなるように構成する態様,及び,このような構成により,M1をMnより大きくすることができることが記載されている。また,【0043】には,溝が中立線を挟む(含む)ように音叉腕に設けられている第1実施例~第4実施例の水晶発振器に用いられる音叉形状の屈曲水晶振動子の基本波モード振動での容量比r1が2次高調波モード振動の容量比r2より小さくなるように構成されていること,及び,このような構成により,同じ負荷容量CLの変化に対して,基本波モードで振動する屈曲水晶振動子の周波数変化が2次高調波モードで振動する屈曲水晶振動子の周波数変化より大きくなることが記載されている。

しかし,上記【0041】と【0043】の各記載に係る構成の態様は,それぞれ独立したものであるから,そこに記載されているのは,各々独立した技術的事項であって,これらの記載を併せて,本件追加事項,すなわち,「中立線を残してその両側に,前記中立線を含めた部分幅が0.05mmより小さく,各々の溝の幅が0.04mmより小さくなるように溝が形成された場合において,基本波モード振動の容量比r1が2次高調波モード振動の容量比r2より小さく,かつ,基本波モードのフイガーオブメリットM1が高調波モード振動のフイガーオブメリットMnより大きい」という事項が記載されているということはできない。…そうすると,本件追加事項の追加は,本件特許明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものというべきである。

 

 

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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