東京地判平成9年(ワ)938
【芳香性液体漂白剤組成物】(カビキラー)

*「含有する」というクレーム文言=普通の意味どおり、含んでいれば足りる。

*経時変化する製品の直接侵害を認めた

Cf.平成14(ネ)4193「ドクターブレード事件」(後掲)
Cf.H19(ワ)10364
Cf.H23(ネ)10074

(判旨抜粋)
本件特許発明一は、芳香性液体漂白剤組成物という物の発明であって、その製造方法には何らの限定もないものであるから、特許請求の範囲に記載された香料を当初から添加する場合だけでなく、当該香料が製造後使用時までの間に含有されるように、当該香料を生成させ得る別の香料を製造時に添加する場合も、その技術的範囲に属するものというべきである。
…被告側の実験の結果によっても、実験開始から二八日が経過した時点で、「ジメチルベンジルカルビニルイソブチレート」の約三分の一が「ジメチルベンジルカルビノール」に変化していることが認められる。本件被告製品は家庭用かび取り剤であるところ、右の二八日ないし三〇日という期間は、本件被告製品が製造されてから商品の流通過程を経て一般需要者の手にわたるまでの通常の期間と比較して決して長すぎるものではなく、また、家庭用かび取り剤は、一本の容器の内容物を一回で使い切ることはまれであり、通常、家庭に備えられてある程度の期間にわたって清掃等の都度使用されるものであることからも、本件被告製品においては、需要者による使用時までの間に「ジメチルベンジルカルビニルイソブチレート」のうちのかなりの部分が「ジメチルベンジルカルビノール」に変化しているものと認めるのが相当である。
したがって、本件被告製品は、その製造時(別紙「被告製品目録」一記載の構成)には本件特許発明一の構成要件(1)に記載された香料のいずれをも含有するものではないが、その後の経時変化により必然的に構成要件(1)に記載された「ジメチルベンジルカルビノール」を含有することになるのであるから、被告が本件被告製品を製造する行為は、本件特許発明一を実施する行為に該当するというべきである。…

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/508/013508_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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