平成31年(行ケ)10041【創傷被覆材】<菅野>

<サポート要件>
*明細書に記載された2つの数値範囲から最小値同士に基づく計算により、サポート要件〇。
「直径の最小値である280μm,密度の最小値である50個/cm2を基に計算すると…開孔率は3.07%となる。…記載されているに等しい事項である…。」

<進歩性>
*副引用発明の一部のみを取り出して、主引用発明に適用する動機付けなし

(判旨抜粋)
<サポート要件>
…創傷部位上に適量の滲出液を保持するための貫通孔の開孔率は,本件明細書の「第1表面(11)での開口面積が,直径280~1400μmの円形に相当することが好ましい。」…,「貫通孔(13)は, 50~400個/cm2の密度で存在することが好ましく,60~325個/cm2の密度で存在することがより好ましい。」…との記載から,貫通孔の孔径及び密度に関する好ましい範囲のうち,直径の最小値である280μm,密度の最小値である50個/cm2を基に計算すると…開孔率は3.07%となる。…「開孔率3.07%以上」との発明特定事項は,本件明細書の発明の詳細な説明に直接の記載はないものの,記載されているに等しい事項であるといえるから,貫通孔に関して上記の開孔率とすることにより,本件発明の課題を解決すると認識するといえる。

<進歩性>
…甲4に記載された発明は,創傷面と第2層との間において適度な貯留空間を形成して創傷面上に適度な滲出液を保持するとともに,滲出液が面内方向に広がるのを防止する機能を有する多数の孔が設けられた第1層と,初期耐水圧シート材である第2層,水を吸収し保持することが可能なシート材(第3層)を一体化させた構造を有することにより,創傷面の湿潤状態を保つ技術的意義を有するものであるから,甲4に記載された発明のうち第1層のみを取り出して,甲1発明に適用する動機付けはない。…原告が主張する技術常識1の3つの機能は,そのような機能を有する創傷被覆材に関する上記3つの特許文献に記載されているにすぎず,具体的な創傷被覆材の構成を捨象して,このような特許文献の各記載から,創傷被覆材一般において,湿潤療法を効果的に行うためには,技術常識1の機能を持たせることが技術常識であると認めるには足りない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/012/090012_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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