東京地判平成31年(ワ)7470,7476【グラフェン前駆体として用いられる黒鉛系炭素素材】<佐藤>

 

公然実施品が数値に入れば、認識なくても公然実施成立(争われていない)

 

被告製品(公然実施品)は、

転売禁止なし

一般的に販売される黒鉛粉末

機密保持契約の対象外

 

X線解析法は本件明細書でも説明なし

 

 

(判旨抜粋)

【請求項1】…Rate(3R)が31%以上である…黒鉛系炭素素材。Rate(3R)=P3/(P3+P4)×100…(式1) ここで, P3は,菱面晶系黒鉛層(3R)のX線回折法による(101)面のピーク強度 P4は,六方晶系黒鉛層(2H)のX線回折法による(101)面のピーク強度

被告製品…は,導電材や導電塗料などに用いる黒鉛粉末であり,その転売が禁じられていたともうかがえないものであり…,これを購入した相手方において,それらの製品のような黒鉛粉末の物性に係る秘密を保持すべき義務を負うとは考え難い。…被告らがそのような義務を課した秘密保持契約を取引先と締結していたと認めるに足りる証拠はない。これに対し,原告は,基本契約書の実例…を証拠として提出するが,同契約書は「相手方の技術情報および営業上の秘密情報」に係る秘密保持を定めるのみであり…,被告が提出する基本契約書の実例…も「業務上の機密」を秘密保持の対象とするにすぎない。また,原告は,被告日本黒鉛工業と締結した…機密保持契約書…を提出するが,当該契約書は,「共同技術開発」などの「検討」に係る契約書であり…,製品の販売先が秘密保持義務を負うことの根拠となるものではなく,被告製品…のように一般に販売される黒鉛粉末の物性が,当然に秘密保持義務の対象になるとは考え難い。…

原告は,被告らが,本件各出願前に,被告製品…を販売していたとしても,被告ら及びその相手方は,同各製品を分析することにより,本件各発明の特許請求の範囲に記載されている物に該当するかどうかの判断をし得る技術を有していなかったと主張する。しかし,X線回折法は,本件明細書等に特段の説明もなしに記載されているとおり,物質の一般的な分析方法であると考えられ,外部の業者に委託し,これを測定・解析することは可能であったと認められる。…

 

090941_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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