東京地判平成30年(ワ)36690【携帯情報通信装置】<國分>

 

NPE勝訴~実施料率0.01%

 

SEP(標準必須特許)ではないが、パテントファミリーとしての実施許諾という“被告の”実情を考慮した。

(原告はライセンス実績なし)

 

アップル/サムソンの平成25年(ネ)10043に続き、スマートフォンの特殊性が考慮された。

 

(判旨抜粋)

…株式会社帝国データバンクが作成した「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~本編 平成22年3月」(…「本件報告書」という。)…及び前記「実施料率〔第5版〕」には,電気等の分野の実施料率の平均値等の記載があるものの,本件報告書では,エレクトロニクス業界のライセンス交渉実態について,一つのデバイスが関連する特許が膨大な量となることから,実施料率の定めに特徴がある旨の記載がされており,そこで例示されている実施料率は,上記の平均値を大幅に下回るものである。このような事情は携帯電話機(スマートフォン)である被告各製品にも当てはまるものと考えられるから,被告各製品に関して,業界における実施料の相場等として上記の平均値等の記載を採用するのは相当とはいえない。…

被告従業員の前記陳述書においては,被告各製品に関連する標準必須特許以外のライセンス契約において,パテントファミリー単位での特許権1件あたりのライセンス料率が…%であり,そのうち,ランニング方式での契約をとるC社との契約においてはライセンス料率の平均が約…%であったこと,また,被告が,平成22年頃,被告各製品の販売に関連し,画像処理・外部出力関連の標準規格の特許ライセンス料を含む使用許諾料として支払っていた額は1台当たり合計…米ドルであったことが説明されている(…被告各製品1台当たりの売上高は約●(省略)●円である。)。…

②本件発明が被告各製品にとって代替不可能なものとは認められず,③本件発明を実施することによる被告の利益の程度も明らかではないこと,…④原告と被告との間に競業関係がなく,原告は,特許発明について自社での実施はしておらず,他社に実施許諾をして実施料を得ることを営業方針としているものの,これまで保有する特許発明について,実施許諾契約の締結に至ったことはないことといった事情を総合考慮すれば,本件発明について,被告各製品の製造,販売に対して受けるべき実施料率は0.01%と認めるのが相当である。

 

090208_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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