東京地判平成27年(ワ)16829【防蟻用組成物】
<損害論>102条2項推定覆滅事由~3割
本件発明の作用効果は,防蟻用組成物である被告製品にとって最も重要な効果の一つである。
被告製品の需要者は建築物の施工業者等であり,被告の営業努力や被告と顧客との継続的な関係性が被告の売上に相当な役割を果たした。
<推定覆滅事情>
本件発明の作用効果は,防蟻用組成物である被告製品にとって最も重要な効果の一つであり,需要者の購入意欲に大きく結びつくものである。
他方,被告製品の需要者は建築物の施工業者等であり,一般消費者へ小売りされる性質のものでないことからすると,被告の営業努力や被告と顧客との継続的な関係性といった要素が被告の売上に相当な役割を果たしたことは否定できない。
⇒法102条2項の推定について,大幅にその推定が覆滅するとはいえない。推定は30%の限度で覆滅。
(判旨抜粋)覆滅割合
本件訂正発明の上記作用効果は,防蟻用組成物である被告製品にとって最も重要な効果の一つであるといえ,需要者の購入意欲に大きく結びつくものである。
他方,被告製品は建築物の床下の土台部分の建材に塗布して塗膜形成する防蟻剤であって,被告製品の需要者は建築物の施工業者等であり,一般消費者へ小売りされる性質のものでないことからすると,被告の営業努力や被告と顧客との継続的な関係性といった要素が被告の売上に相当な役割を果たしたことは否定できない。証拠(甲6,63,64の1・2,68,76の1・2)によれば,被告製品の販売代理店や被告製品を使用した建築家等が,被告製品にホウ酸類が含まれていることに関する意見を出し,また,被告製品の特性として木炭とホウ酸が含まれていることを紹介していることが認められるところ,かかる事実も被告が顧客との継続的な関係を築いていたことをうかがわせる。
以上のとおり,本件訂正発明は,塗膜形成用の防蟻用組成物全体に関する発明であることに加えて,本件訂正発明の作用効果は被告製品の需要者の購入意欲に大きく結びつくものであることすれば,法102条2項の推定について,大幅にその推定が覆滅するとはいえない。他方,被告の営業努力や被告と顧客との継続的な関係性といった要素が被告の売上げに大きな役割を果たしたことは否定できないことを踏まえると,本件において,上記アの推定は30%の限度で覆滅し,被告による特許権侵害により原告に生じた損害は上記ア記載の損害の70%であるとするのが相当である。
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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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