平成28年(ネ)10082【生海苔異物分離除去装置】
<損害論>102条2項推定覆滅事情なし、寄与度100%
原告は単なる製造業者であり,アフターサービスをする人材を配置していないとしても,本件発明の顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取引先に対する販売の機会を持ち得なかったということはできない。
<寄与率><推定覆滅事由>
原告は単なる製造業者であり,販売店である被告会社のようにアフターサービスをするだけの人材を配置していないとしても,本件発明の実施品の顧客吸引力にもかかわらず,原告がその取引先に対する販売の機会を持ち得なかったということはできない。⇒特許法102条2項による推定を覆滅するには足りないというべきである。
(判旨抜粋)
<寄与率>
本件各発明の売上への寄与の程度に関する主張については,本件各発明は,共回り現象の発生を回避してクリアランスの目詰まりをなくし,効率的・連続的な異物分離を実現するものであって,生海苔異物除去装置の構造の中心的部分に関するものといってよい。すなわち,1審被告ワンマン及び同西部機販指摘のとおり,選別ケーシング(固定リング)と回転円板との間に設けられたクリアランスに生海苔混合液を通過させることによりクリアランスを通過できない異物を分離除去する装置が従来用いられていたとしても,従来の装置は本件各発明が解決課題とする問題点を抱えていることは明らかであり,この点は需要者の購買行動に強い影響を及ぼすものと推察される。このことと,従来の装置の現在における販売実績等の主張立証もないことを考えると,本件各発明の実施は生海苔異物除去装置の需要者にとって必須のものであることがうかがわれる。
他方,本件各発明が本件装置に寄与する割合を減ずべきであるとする1審被告ワンマン及び同西部機販の主張の根拠は,いずれも具体性を欠くものにとどまる。
そうすると,本件各発明が本件装置及び本件各部品の販売に寄与する割合を減ずることは相当でない。
<覆滅事由>
推定覆滅事由の主張については,1審被告ワンマン及び同西部機販の主張は,要するに1審原告が販売店ではなく製造業者であるという事実ゆえに製造業者であるとともに販売も行う1審被告ワンマンや販売業者である同西部機販と同程度に利益を得ることはできない,というにとどまるところ,当該主張事実のみをもって,本件各発明の実施品の顧客吸引力にもかかわらず,1審原告がその取引先に対する販売の機会を持ち得なかったということはできない。他に1審原告が取引の機会を奪われたとはいえない特段の事情もない。
したがって,1審被告ワンマン及び同西部機販の指摘に係る事情は,法102条2項による推定を覆滅するには足りないというほかない。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/532/086532_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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