東京地判平成14年(ワ)16268【電気コネクタ用銅基合金】<飯村>

①本件明細書の記載
②成分元素や添加量の変化が,合金の性質に与える予測可能性が極めて低いこと
③出願過程における主張

「実質的に~からなる」
⇒合金の特性に影響を与える元素を含有することは許容しない

(判旨抜粋)
…②一般的に,合金は,成分元素や添加量を変化させた場合に合金の性質に与える予測可能性が極めて低いこと,③原告は,本件特許の出願過程において,Cu-Ni-Si基合金に,他の元素を増加させると電気伝導率や曲げ特性が悪化すると述べて,スズ(Sn)を0.39%含有する合金は電気伝導率が下がるので採用し得ないとして,本件発明の技術的範囲から除外すべきである旨述べていること等の事実に照らすならば,構成要件Aの「実質的に…から成る」とは,ニッケル(Ni),ケイ素(Si),マグネシウム(Mg)及び銅(Cu)以外の元素について,明細書中に具体的な記載がある元素,及び明細書の記載に基づいて当業者が容易に想到できる元素を含有させることを許容する趣旨と解すべきであるが,その範囲を超えた,合金の特性に影響を与える元素を含有させることを許容する趣旨と解することはできない。…被告製品に含有されている亜鉛(Zn)とスズ(Sn)は,構成要件A所定のマグネシウム(Mg)と比較して,含有量においてこれをしのぐものであり,合金の特性において,耐応力緩和性を向上させる一方,電気伝導性を低下させるという差異をもたらしている。そうすると,亜鉛(Zn)とスズ(Sn)を含有する被告製品は,構成要件Aを充足しない。

https://tokkyo.hanrei.jp/hanrei/pt/1383.html

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)