平成27年(行ケ)10081【ピタバスタチンカルシウム塩の結晶】<髙部>

*日本薬局方解説書に記載された許容誤差を受け容れなかった
⇒引用例と本件発明との同一性否定

「…±0.2°以内であれば同一と判断し得るということが,当業者の技術常識であったということはできない」

(判旨抜粋)
…本件審決は,14局解説書…の記載から,回折角が±0.2°以 内であれば同一と判断し得ると判断した。…
14局解説書や16局に記載された許容誤差が「±0.2°以内」との判断基準が,特許発明における粉末X線回折測定による回折角の数値一般について妥当するものと解することはできない。また,粉末X線回折測定の回折角の数値により結晶形態を特定した特許出願には,その特許請求の範囲に,特定の数値のみを記載してその許容誤差の範囲を記載していないものも,許容誤差の範囲を記載しているものも存在し,後者において記載された許容誤差の範囲も,±0.2°に限られず,様々である…。したがって,14局解説書や16局の記載から,本件優先日当時,特許発明の同一性を画する場面において,粉末X線回折測定による回折角の数値は,±0.2°以内であれば同一と判断し得るということが,当業者の技術常識であったということはできない。以上によれば,本件発明1と甲3結晶が同一であるとはいえない。

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/691/085691_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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