平成22年(行ケ)10265【くつ下】<滝澤>

*優先権当初明細書に記載が無い「実質的」等の記載が明細書に追記されたが、くつ下の「V字の形状,構造に影響しない。…優先権当初明細書に記載された発明と比較して…請求項1及び請求項3の権利範囲が広がってい…ない」
⇒優先権〇

※この判決からすれば、明細書の新規事項追加は、それにより拡大する請求項が無効理由。人工乳首事件以降、クレーム変更なしで明細書の新規事項追加で無効という判決は無いことに実務上留意したい。

(判旨抜粋)
例えば,「尚,これまでの図1の説明において言う「実質的に同数」とは,針釜が正方向に回動した際の針数の減少数又は増加数と,逆方向に回動した際の針数の減少数と増加数との間に,編み立てに関与する編針の針数の約10%程度が相違してもよいことを意味する。」という記載(本件訂正明細書【0016】)や,「この針数の正逆方向の減少数は実質的に同数である。」(同【0018】)という記載は,優先権当初明細書にはないものであるが,ここでいう実質的とは,いずれもV字の形状に関するものではなく,針釜が正方向に回動した際の針数の減少数又は増加数と,逆方向に回動した際の針数の減少数又は増加数の相違 に関するものである。そして,V字は,正方向に回動した際の回動端であるところの連結線HJと連結線HM又は連結線NTと連結線VNによって規定されるものであるから,正方向と逆方向の間における針数の増加数又は減少数の相違は,V字の形状,構造に影響しない。そうすると,優先権当初明細書に記載された発明と比較して,本件訂正発明の請求項1及び請求項3の権利範囲が広がっているということはできない。

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/619/081619_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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