平成20年(ワ)38602【無線アクセス通信システム】<東海林>

発明の詳細な説明に記載がない
⇒サポート要件×
「本件発明…の…と解釈される部分は…本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,かつ…発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもなく…。」

⇒実施可能要件×
作用効果を奏するように実施できる必要あり。

(判旨抜粋)
…本件当初明細書等に記載された時刻の制御は,交換システムの内部構成におけるプロセッサからボコーダに送信する時刻を制御することを意味するものであって,「交換システム」の「出口」から「送信」する「時刻」を制御するものについては何らの記載もなく,また,示唆もない…。…本件発明…「入トラヒックを運ぶパケットが当該交換システムの出口から送信される時刻の前の所定のウィンドウ時間内に当該交換システムの入口で受信されるように入トラヒックを当該交換システムの出口が送信する時刻を制御する手段」と解釈される部分は…本件明細書等の発明の詳細な説明に記載のない事項であり,かつ,本件明細書等の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもなく,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものともいえない…。

…実施可能要件を満たすためには,出願当時の技術常識からみて,当業者が,出願に係る発明を正確に理解でき,かつ過度の試行錯誤を経ることなく発明を再現することができるだけの記載がなければならず,その結果,所期の作用効果を奏することができるものであることを要すると解するのが相当である。…

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/253/083253_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)