平成17年(行ケ)10608<篠原> 「除くクレーム」の補正要件

⇒重なりを除く訂正でないし、先行技術と技術的思想が顕著に異なる旨の主張立証なし
⇒補正要件×

「先行技術との重なりを除く訂正を…明細書に記載した事項の範囲内のものであると取り扱うことの当否はさておき…」

(判旨抜粋)
…先行技術との重なりを除く訂正を,いわゆる「除くクレーム」として,明細書に記載した事項の範囲内のものであると取り扱うことの当否はさておき,…本件訂正事項は,鉄系材料におけるアルミニウムについて,「不可避的不純物として含まれる量を超える量のアルミニウムを含まない」とするものであるところ, …本件特許明細書の記載はもとより,本件出願時の当業者の技術常識…を参酌しても…「不可避的不純物として含まれる量を超える量」が,どのような量であるかが明確であるとは認められない以上,本件訂正によって,「アルミニウムを0.03-0.1%(好ましくは0.03-0.07%)」含むという引用発明との重なりが除かれるとは,直ちには,認めることができない。 そして,脱酸剤として添加されたアルミニウムも不可避的不純物という場合があるという…当業者の技術常識に従うと,アルミニウムが脱酸剤として添加される場合,最終製品の性質に対する影響から,その割合が 0.1パーセント以内に限る趣旨の記載が先行技術に係る公開特許公報等にみられること…からも,引用例のように,鉄系材料に0.03パーセントから0.1パーセントのアルミニウムを含む場合も,「不可避的不純物として含まれる量を超える量のアルミニウムを含まない」場合であるともいい得るのであり,この意味でも,本件訂正事項により引用発明と本件発明1との重なりは除かれていないこととなる。したがって,本件訂正事項は,鉄系材料におけるアルミニウムの含有の点について,引用発明と本件発明1との重なりを除くものであるとは認められないのであるから,重なりが除かれることを前提とする原告の主張は,そもそも,その前提を欠く…。…
…いわゆる「除くクレーム」についての上記取扱いは…審査基準…のとおり,先行技術と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有する発明であるが,たまたま先行技術と重複するような場合に許されるとされており,補正の有無にかかわらず当該先行技術と技術的思想が顕著に異なる発明について許されるとされているものと解される。本件において,鉄系材料におけるアルミニウムの含有について,本件訂正事項のように限定することは,本件特許明細書に記載していない事項であるし,その ような限定が,本件特許明細書から自明な事項であるともいえない…から,上記取扱いによる本件訂正の適法性をいうためには,原告は,鉄系材料におけるアルミニウムの含有についての限定がないと解される本件発明1について,先行技術である引用発明と技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有する旨の主張・立証をすることを要すると解されるところ,原告は,鉄系材料について「不可避的不純物として含まれる量を超える量のアルミニウムを含まない」発明と引用発明との技術的思想の違いを主張するのみであって,この点でも原告の主張は,理由がない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/236/033236_hanrei.pdf

 

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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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