平成13年(行ケ)209【電子写真複写機用クリーニングブレード】

測定方法に関する実施可能要件×
⇒明細書中で有意としている有効桁数を測定可能な条件等を記載する必要あり
使用するカラムの種類・本数が異なると,比が異なると考えられていた
=H17(行ケ)10143(明確性要件×)

(訂正後のクレーム)重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が,GPC法の測定によって2以下である分子量分布を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンゴムからなることを特徴とする電子写真複写機用クリーニングブレード

(判旨抜粋)
…比(Mw/Mn)の数値に注目すると,小数点以下第一位までを有効数字としていること,及び,数値2.0のFT5を本件訂正前発明の具体例とし,数値2.1のFT11を比較例とし,これら小数点以下第一位が「1」違うものを対比して,上記効果を裏付けようとしていることから,当初明細書は,比(Mw/Mn)の具体的数値として,小数点以下第一位までを有意なものとしていると認められる。
甲4文献の…記載によれば,同文献が発行された昭和43年当時,…同じGPC法による場合であっても,使用するカラムの種類・本数が異なると,やはり比(Mw/Mn)が異なるものと,一般的に考えられていた,と認めることができる。…分子量分布を示す比(Mw/Mn)の算出において,その求め方を特定しなければ,比(Mw/Mn)の数値を,小数点以下第一位までを有効桁数として得ることはできないとの知見が,甲4文献の出版当時,すなわち本件出願前に,一般的なものとして存在していたものと認められる。そして,…上記状況は本件出願時にも継続して存在していたと推認できるのである。
…結局、当初明細書には,比(Mw/Mn)の値が2以下(小数点以下第一位までを有意なものとする)であるポリオールをどのように求めたらよいのか,記載されていないことになり,本件発明の原材料としてどのようなポリオールを用いればよいのか,当業者は理解できない。したがって,当初明細書には,当業者が容易に本件訂正前発明を実施することができる程度に,発明の構成が記載されている,と認めることはできない。

https://tokkyo.hanrei.jp/hanrei/pt/2133.html

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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