大阪地判平成30年(ワ)4851【クランプ装置】

 

①例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識・認容していれば足りる。

⇒102-2の間接侵害〇

 

②*一部請求と残部の時効中断(裁判上の催告)

 

 

①「間接侵害が成立する…用途に係る限定を付すことなく差止請求を認めたとしても過剰とはいえない」

 

②「債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6か月以内に所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解される(最高裁平成25年6月6日第一小法廷判決・民集67巻5号1208頁参照)」

 

 

(判旨抜粋)

被告製品群7及び8は,スイングクランプのほか,リンククランプ,リフトシリンダ,ワークサポートにも使用可能なものである…。しかし,特許法101条2号の趣旨に鑑みれば,発明に係る特許権の侵害品「の生産に用いる物…がその発明の実施に用いられること」とは,当該部品等の性質,その客観的利用状況,提供方法等に照らし,当該部品等を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し,部品等の生産,譲渡等をする者において,そのことを認識,認容していることを要し,またそれで足りると解される。 本件においては,…被告製品群7及び8に属する製品がスイングクランプと組み合わせて販売される割合が大きいことに鑑みると,これを購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が被告製品群7及び8を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在するとともに,被告らはそのことを認識,認容していたものといえる。そうである以上,上記事情は本件における間接侵害の成立を 妨げるものではない。…

被告らは,被告製品群7及び8につき差止を認めることは過剰差止として許されないなどと主張する。しかし,前記…のとおり,被告製品群7及び8については,これを購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在することなどから,その製造,販売等につき間接侵害が成立するのであるから,用途に係る限定を付すことなく差止請求を認めたとしても過剰とはいえない。

 

…数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合,当該訴えの効力はその一部についてのみ生じ,残部について,裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずるものではない(最高裁昭和34年2月20日第二小法廷判決・民集13巻2号209頁参照)。もっとも,上記の場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6か月以内に所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解される(最高裁平成25年6月6日第一小法廷判決・民集67巻5号1208頁参照)。本件において,原告は,数量的に可分な債権である不法行為に基づく損害賠償請求権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起したものであり,その残部について,裁判上の請求に準ずるものとして消滅時効の中断の効力を生ずることはない。もっとも,被告らは,原告によって残部につき裁判上の催告がされたことは争わないことから,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情はなく,本件訴えの提起によって,残部については裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずる。したがって,被告ら主張に係る残部については,裁判上の催告による消滅時効の中断の効力が生じており,いまだ消滅時効は完成していない。この点に関する被告らの主張は採用できない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/623/089623_hanrei.pdf

 

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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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