大阪地判平成27年(ワ)8974【…異常発生時にラダー回路を表示する装置】

 

*例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高いことを認識・認容していれば足りる。

⇒102-2の間接侵害〇

(ソフトウェアの生産/譲渡)

 

*全部差し止めても、過剰差止めではない

 

102-1「のみ」要件の間接侵害は×

 

 

(判旨抜粋)

…特許法101条2号においては,「発明が特許発明であること」(主観的要件①)及び発明に係る特許権の直接侵害品の生産に用いる「物がその発明の実施に用いられること」(主観的要件②)を知りながら,その生産,譲渡等をすることが間接侵害の成立要件として規定されている。…主観的要件②について,部品等の生産,譲渡等をする者において,当該部品等の個々の生産,譲渡等の行為の際に,当該部品等が個々の譲渡先等で現実に特許発明の実施に用いられることの認識を必要とすると解するのでは,当該部品等の譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあることを認識,認容している場合でも,個別の譲渡先等の用途を現実に認識していない限り特許権の効力が及ばないこととなり,直接侵害につながる蓋然性の高い予備的行為に特許権の効力を及ぼすとの特許法101条2号のそもそもの趣旨に沿わないと解される。以上を勘案すると,主観的要件②が認められるためには,当該部品等の性質,その客観的利用状況,提供方法等に照らし,当該部品等を購入等する者のうち例外的とはいえない範囲の者が当該製品を特許権侵害に利用する蓋然性が高い状況が現に存在し,部品等の生産,譲渡等をする者において,そのことを認識,認容していることを要し,またそれで足りると解するのが相当であり,このように解することは,「その物がその発明の実施に用いられることを知りながら」との文言に照らしても不合理な解釈ではない。…

被告は,被告製品3には適法な用途があるから,その生産,譲渡等を全面的に差し止め,廃棄を命じるのは過剰である旨主張する。しかし,被告製品3に適用な用途があるとしても,被告製品3が本件発明1の特徴的技術手段を担う不可欠品であり,その譲渡等により特許権侵害が惹起される蓋然性が高い状況が現実にあり,そのことを被告において認識,認容していると認められる以上,その生産,譲渡等を全面的に差し止め,その廃棄を命じるのが,多用途品であっても侵害につながる蓋然性の高い行為に特許権の効力を及ぼすこととした特許法101条2号の趣旨に沿うものというべきであるし,そのように解しても,被告は,被告製品3から本件発明1の技術的特徴手段を除去する設計変更をすれば間接侵害を免れるのであるから,被告製品3の生産,譲渡等の差止め命令及び廃棄命令が過剰な差止め・廃棄命令であるとは解されない(なお,被告製品3にこのような設計変更をした場合でも,製品名が変わらない場合には,差止判決の対象外とするために請求異議訴訟を経ることが必要になるが,そのような起訴責任を転換する負担を被告が負うことはやむを得ないというべきである。)。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/263/088263_hanrei.pdf

 

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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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