平成30年(ネ)10006【システム作動方法(カプコンv.コーエー)】(鶴岡)

 

*方法発明の間接侵害(101条4号)は、他の物と組み合わせることにより方法発明を使用する物も含む。当該「他の物」を現に保有していなくても、間接侵害成立。

 

Cf. 知財高裁(大合議)平成17年(ネ)10040【一太郎】

<TIP>一太郎事件では、一太郎をインストールしたPCが、方法発明に直接使用される物であり、CD-ROMは「間接の間接」侵害品であった。本件では、イ号製品である「第2の記憶媒体」がゲーム装置に装填され、方法発明に直接使用される「物」であるから、「間接の間接」ではない。⇒イ号製品が方法を“直接”使用するように、クレームを作成すべき!

 

 

(判旨抜粋)

…被控訴人は,①本件発明A1の「第1の記憶媒体と…第2の記憶媒体とが準備されており」とは,実施行為者において各記憶媒体をゲーム装置に装填可能に準備することを意味するものであるところ,本編ディスクを保有せずにイ-9号製品等のみを保有しているユーザは,MIXJOYを選択することはないから,本件発明A1の方法を実施することがなく,かつ,イ-9号製品等には,単独でも十分楽しめる内容のゲームプログラムが備わっているから,イ-9号製品等は,社会通念上,経済的,商業的又は実用的な他の用途を有するものであって,本件発明A1の方法の使用にのみ用いる物ではない,②本件発明A1を実施する物は,「本編ディスク及びアペンドディスクを装填したプレイステーションからなるゲームシステム」であり,イ-9号製品等は,イ-9号方法等を実施する装置の生産に用いられる物に過ぎないから,「その方法の使用に…用いる物」に該当しない旨主張する。

…まず,上記①の点について,…「第1の記憶媒体と…第2の記憶媒体とが準備されており」とは,ゲームソフトメーカ等により第1の記憶媒体及び第2の記憶媒体が提供され,ユーザにおいてこれを入手することが可能な状況を意味するものであって,ユーザにおいて各記憶媒体を現に保有することを意味するものではないと解される。…

…次に,上記②の点については,本件発明A1は,「記憶媒体…を上記ゲーム装置に装填してゲームシステムを作動させる方法」(構成要件A)であって,「上記第2の記憶媒体が上記ゲーム装置に装填される」(構成要件D)ことを発明特定事項とするものであるから,「上記第2の記憶媒体」に相当するイ-9号製品等は,「その方法の使用に…用いる物」に該当するといえる。また,特許法101条4号の「その方法の使用にのみ用いる物」は,当該「物」のみにより当該特許発明を実施するものである旨の限定は付されていないから,他の物と組み合わせることにより当該特許発明を実施する物も「物」に含まれると解される。

 

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/970/088970_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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