大阪地判平成29年(ワ)7576【基礎パッキン用スペーサ】
<損害論>102条2項の推定覆滅事由~7割
被告カタログでは,本件発明以外が強調されている(強度や換気性能,供給・品質・価格の安定性,カットしやすい独自の形状を有する省施工商品であること等)
効果を奏しないで使用されることがあり得る。
<推定覆滅事由>
被告カタログから、「テーパ部」の存在故に「素手で持っても痛く」ないという効果を奏しているとも断じ得ない。本件発明の効果に言及する記載もない。
被告カタログに「6つの特徴」の1つとして「スピード施工」が挙げられているが、「連結構造」とされる接続部の構造や接続の仕方ないし効果に関する説明はない。
⇒被告カタログでは,本件発明以外が強調されている(被告製品の強度や換気性能,供給・品質・価格の安定性,カットしやすい独自の形状を有する省施工商品であること等)。
この点は,原告や同業他社のカタログ等にも共通する。このうち,原告のカタログ等には「テーパ部」や「接続部」に関する記載も見られるものの,その構造は具体的に示されておら
被告製品が本件発明の効果を奏しない形で使用されることがあり得る。
被告は,被告製品の形状変更後に売上げが増加したことを指摘しているが,形状変更後の4か月の売上額を集計したものにすぎない。
(判旨抜粋)
覆滅事由
・被告主張の競合品⇒競合品と認められないとして否定
・顧客吸引力の観点から被告第2製品における本件第2及び第3特許の技術的意義の有無及び程度を検討すると,まず,本件被告カタログ記載の「6つの特徴」の1つとして,被告第2製品は「素手で持っても痛くありません。」との記載がある。「テーパ部」の解釈に関する被告の主張をも考慮すると,これは「テーパ部」の存在をうかがわせるものとも理解し得るものの,いかなる構成によって「素手で持っても痛く」ないことを実現しているのかは具体的に示されていない。当該記載に付された写真では,製品のアンカーボルト挿通用の開口部に手指を通して握る形で,当該開口部を囲む部材のうち長辺部分をなす部材のうちの1つを掌全体で把持していること(甲4,乙32)に鑑みると,「テーパ部」の存在故に「素手で持っても痛く」ないという効果を奏しているとも断じ得ない。また本件第2発明の効果2に言及する記載もない。
さらに,本件被告カタログには,「6つの特徴」の1つとして,「スピード施工」が挙げられているところ,その部分には,被告第2製品の片方の端部の接続部について「連結構造」との説明が付されている。もっとも,「連結構造」とされる接続部の構造や接続の仕方ないし効果に関する説明はない。
むしろ,前記認定のとおり,本件被告カタログでは,被告第2製品の強度や換気性能,供給・品質・価格の安定性,カットしやすい独自の形状を有する省施工商品であること等が強調されている。
この点は,原告や同業他社のカタログ等にも共通する。このうち,原告のカタログ等には「テーパ部」や「接続部」に関する記載も見られるものの,その構造は具体的に示されておらず,作用効果も,他の記載と比較すると,強調の度合いは低い。
むしろ,全周敷き込みの簡単施工や特殊構造の換気スリット・防鼠材といった点が前面に出されて強調されている。
以上の事情に加え,被告第2製品が本件第2発明の効果を奏しない形で使用されることがあり得ることは否定できないこと(ただし,実務上そのような使用態様が採られる割合は不明である以上,この事情を推定覆滅に当たって過大視することはできない。),前述のとおり,台輪の幅方向への移動を防止する別の方法もあることを踏まえると,本件第2及び第3発明は,施工容易性の実現という観点から一定の顧客吸引力を有するといえるものの,本件第2発明の「テーパ部」の構成や本件第3発明の構成要件3C~3Gの構成を有することによる顧客吸引力は,相対的には小さいというべきである。
なお,被告は,被告第2製品の形状変更後に売上げが増加したことを指摘しているが,その裏付けとなる資料(乙60)は形状変更後の4か月の売上額を集計したものにすぎないし,売上げの変動要因としては様々なものが考えられることから,上記事情が直ちに本件第2及び第3特許が被告第2製品の需要に与える影響が小さいことを裏付けると見ることはできない。
これらの事情を総合的に考慮すると,本件では,7割の限度で特許法102条2項による推定が覆滅されると認めるのが相当である。これに反する原告及び被告の各主張はいずれも採用できない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/022/089022_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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