効果のクレームアップ(権利者有利)⑧

 

平成28年(行ケ)10107<森>【乳癌再発の予防用ワクチン】

 

*ワクチンであることが相違点とされた!!

*用途発明の新規性判断

*引用発明が当該用途を奏するという開示なし

*引用例の著作者は、本願発明の発明者

⇒「ワクチン」という用語は出ていたが…

H17(行ケ)10818「タキソールを有効成分とする制癌剤」

H24(行ケ)10419「うっ血性心不全の治療へのカルバゾール化合物の利用」(二次判決)

とは異なる‼

 

「誘導や破壊ができない場合があるから,CTLが誘導されることと,癌ワクチンとして有効であることが技術的に同一であるとはいえない」

 

(判旨抜粋)

…本願優先日当時,「癌ワクチン」について,以下の技術常識が存在したものと認められる。ペプチドが「ワクチン」として有効であるというためには,①当該ペプチドが多数のペプチド特異的CTLを誘導し, ②ペプチド特異的CTLが癌細胞へ誘導され,③誘導されたCTLが癌細胞を認識して破壊すること,が必要である…。あるペプチドにより,多数のペプチド特異的CTLが誘導されたとしても,誘導されたCTLが癌細胞を認識することができない…,誘導されたCTLが癌細胞を確実に破壊するとは限らない…などの理由により,当該ペプチドに必ずしもワクチンとしての臨床効果があるということはできない。

引用発明は,…標準治療後のHLA-A2型のリンパ節転移陰性乳癌患者について,GP2ペプチドとアジュバントのGM-CSFを6か月接種したところ,全ての患者においてGP2特異的CTL細胞のレベルが増加したというものであり,GP2ペプチドがワクチンとして有効であるというために必要な,当該ペプチドが多数のペプチド特異的CTLを誘導したことを示したものである。これに対し,本願発明は,…GP2ペプチドとGM-CSFを投与した無病の高リスク乳癌患者に,GP2特異的CTLが増大したのみならず,再発率が低減した,すなわち,誘導されたCTLが腫瘍細胞を認識し,これを破壊することによって,臨床効果があることを示したものである。…

本願優先日当時,あるペプチドにより多数のペプチド特異的CTLが誘導されたとしても,当該ペプチドに必ずしもワクチンとしての臨床効果があるとはいえない,という技術常識に鑑みると,ペプチド特異的CTLを誘導したことを示したにとどまる引用発明は,本願発明と同一であるとはいえない。

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/567/086567_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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