効果のクレームアップ(権利者有利)⑨

 

平成29年(行ケ)10041<高部>【熱間プレス部材】

 

 

*クレームアップされた効果が構成であるとした上で、同構成が容易想到でないとした

 

*認識必要説=優先日後の実験×

 

 

【請求項1】…腐食に伴う鋼中への水素侵入が抑制されることを特徴とする…

 

「優先日時点…引用発明が耐水素侵入性を有していることを認識することができたものとも認められない。」

 

 

(判旨抜粋)

【請求項1】 …鋼板表面に10質量%以上13質量%未満のNiを含み,かつ鋼板片面当たりの付着量が50g/m²超えのZn-Ni合金めっき層を有するNi系めっき鋼板を熱間プレスした熱間プレス部材…。

 

…当業者において,Zn-Ni合金めっき層のNi含有率や,Ni含有率と鋼板片面当たりのZn-Ni合金めっき層の付着量との関係に着目し,鋼板の表層にNi拡散領域を十分に形成し,腐食に伴う鋼中への水素侵入を抑制可能な熱間プレス部材とするために,引用例1において優れたプレス成形性,塗膜密着性及び耐食性を示したことが記載されている引用発明1のZn-Ni合金めっき層について,あえて…Ni含有率を10質量%以上13質量%未満の状態に維持したままで,めっき付着量を「50g/m²」から「50g/m²超え」とすることの動機付けは存在しない。…

原告は,…めっき付着量を50g/m²からごく僅かな量だけ増やすことで本件発明1の相違点1に係る構成に想到することは容易である旨主張する。…引用例1に,亜鉛系めっき層の組成は特に制限がなく,Niなどの合金元素をその目的に応じて適宜量添加したものでもよい…としても,…Ni含有率を10質量%以上13質量%未満の状態に維持したままで,めっき付着量を「50g/m²」から「50g/m²超え」とすることの動機付けが存在しないことについては,前記…のとおりである。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/562/087562_hanrei.pdf

 

 

【特許★】機能的に表現されたリーチスルークレームの充足論、進歩性、サポート要件。(「PCSK9に対する抗原結合たんぱく質」事件)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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