令和4年(行ケ)10030【ポリエステル樹脂組成物の積層体】<菅野>

*「除くクレーム」は発明の課題に影響が及ばなければ、新たな技術的事項の導入に当たらない。
⇒訂正要件〇(訂正後の進歩性判断せず)

★差し戻し後の異議決定は、除くクレームでも進歩性×で、2023年5月19日付けで取消理由通知(決定の予告)。

(判旨抜粋)
…被告は、本件訂正事項2のような「除くクレーム」とする訂正は、第三者に明細書等の記載に関して誤解を与える可能性があり、不測の不利益を及ぼす蓋然性が高いものというべきである旨主張する。しかし、被告主張のような懸念が仮にあったとしても、それは、訂正後の請求項につき、明確性要件やサポート要件等の適合性を巡って検討されるべき問題というべきであるから、いずれにしても、本件事案において、この点をもって直ちに訂正を認めない理由とすることは相当でない。…
…訂正…によって「該積層体上に無機酸化物の蒸着膜が設けられ、その蒸着膜上にガスバリア性塗布膜が設けられてなるもの」を除外することにより、新たな技術的事項が導入されるわけではなく、新規事項が追加されるものではない。本件発明の課題は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体を 提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムの積層体を提供すること(【0008】)であるが、上記除外によってこの技術的課題に何らかの影響が及ぶものではない。

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/870/091870_hanrei.pdf

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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