令和4年(行ケ)10029【防眩フィルム】<東海林>

①実施例がクレームに入らない形状・構造を含んでいても、実施可能性〇(サポート要件も〇)

②測定条件には自ずと制限があり、当業者は合理的に測定する。⇒明確性要件〇

③2つのパラメータが関連しあうときに、主引用発明の片方のパラメータのみを、他方のパラメータと切り離して調整する示唆を否定した。⇒進歩性〇

【請求項1】「ヘイズ値が60%以上95%以下の範囲の値であり、内部ヘイズ値が0.5%以上8.0%以下の範囲の値であ…る、防眩フィルム。」

(判旨抜粋)
①第1実施形態により作成できる防眩フィルムの中に、第2実施形態や第3実施形態により作成できないものがあったとしても、それにより、第1実施形態により本件各発明が実施可能であることが否定されるものではない。なお、第2実施形態により製造された第2構造防眩層、第3実施形態により製造された第3構造防眩層の中に、第1構造防眩層とは異なる形状・構造を有するものがあり、それらが本件各発明の光学三特性を満たさなかったとしても、それらは本件各発明を実施するものではないというにとどまり、それによって本件各発明の実施可能性が否定されるわけではない。

②…当業者であれば、測定結果に変動が生じないように測定条件を設定しようとすると解され、本件各発明の輝度分布の標準偏差を得るに当たり、測定結果に変動が生じないように測定条件を設定することが不可能であることを示す証拠はない。また、…当業者が、およそディスプレイのユーザが感じるギラツキとの乖離が著しくなるような条件で…輝度分布を測定するものと解することはできない。そうすると、本件各発明における輝度分布の測定に当たり設定可能な条件には、同じ防眩フィルムに関する測定結果が変動せず一定になるように設定する…等の制限があるということができ、当業者であればこれらの制限のもとで合理的な範囲で条件を設定して測定するものと推認される。…

③相違点1-1/「防眩層」が、本件発明1は、「内部ヘイズ値が0.5%以上8.0%以下の範囲の値であ」るのに対して、引用発明は、「内部ヘイズ値」が分からない点。…
引用例2は…表面ヘイズを規定することにより、凹凸の程度(表面拡散要素)をより具体的に表すことが記載されており…、表面ヘイズの値は、ギラツキと技術的に一体不可分である凹凸の形状を規定するものであるから、引用例2の記載は、表面ヘイズ値と切り離してギラツキを調整することを示唆するものと解することはできない。…周知文献A1も、「内部へイズは、5~30%であることが好ましく」と記載されているものの、他方で、「表面へイズは20~50%であることが好ましく」とも記載されているから…、表面ヘイズ値と切り離してギラツキを調整することを示唆するものではない。

https://www.ip.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail?id=5952

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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