令和4年(ワ)9716【5-アミノレブリン酸リン酸塩】<柴田>R5.7.28

<充足論>
新規物質の発明~単離されなくても、濃度が低くても充足!!
Cf.東京高判平成15年(ネ)3034<篠原>
【形態学的に均質型のチアゾール誘導体の製造方法】
*混合物が従来技術⇒特定の結晶形が本件発明!
「…出願経過を参酌…A型…B型…の混合物が存在することを前提とした上で…特定の結晶形である「『B』型のファモチジン」に限定した」

<無効論>
新規性〇~理由は、令和4年(行ケ)10091【5-アミノレブリン酸リン酸塩】<東海林>R5.3.22と同じ
⇒引用文献に物質名が記載されていても、当業者が試行錯誤なく実施可能でないと、開示が認められない。
⇒引用文献等から、技術常識に基づいて、少なくとも、混合物として『リン酸塩を』製造可能であった必要がある。
★出願時はリン酸塩が製造困難であった!!
⇒均等論第3要件に通ずる!!

(判旨抜粋)

<充足論>⇒新規物質の発明であるから、単離されていなくても、濃度が低くても充足!!

被告は、各被告製品が、アミノ酸含有食品であること、5-アミノレブリン酸リン酸塩が単離されておらず、その純度が低いことを挙げて、各被告製品が本件発明の技術的範囲に属さない旨主張する。しかし、本件発明は新規な化学物質の発明であり、本件発明の目的は、新規な化学物質としての5-アミノレブリン酸リン酸塩を提供することであって、5-アミノレブリン酸リン酸塩の純度を向上させることにあるのではない。本件発明の5-アミノレブリン酸リン酸塩であれば、それが単離されていなくとも、また、それを含む製品においてそれが高い濃度でなくとも、発明の効果を奏するといえる。

<無効論(新規性)>
⇒新規性〇(理由は、令和4年(行ケ)10091<東海林>と同じ)

…乙16文献から乙18文献までにおいて、5-アミノ レブリン酸単体を得る技術が開示されているとはいえない。これに加え、…本件引用例においても「5-ALAは…化学的にきわめて不安定な物質である」、「5-ALAHClの酸性水溶液のみが充分に安定であると示される」と記載されていて(【0007】)、これらの事項が本件優先日当時の技術常識であったと認められることも考慮すると、本件優先日当時において、5-アミノレブリン酸単体を得る技術が周知であったとは認められない。
この点に関し、原告は、5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造する上で、5-ALAが物質として取り出されている必要はなく、発酵液中に培地成分等と混合した状態であってもよい旨主張する。しかしながら、本件優先日当時、種々の成分を含む混合液に酸又は塩基を添加するという方法が、化合物である塩の製造方法として技術常識であったとは認められないことからすれば、本件引用例に接した本件優先日当時の当業者が、化合物である5-アミノレブリン酸リン酸塩を製造する方法として、培地成分等と混合した状態で5-アミノレブリン酸が存在する発酵液にリン酸を添加する方法(又はこの発酵液をリン酸溶液に添加する方法)を、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮することなく見出すことができたとはいえない。また、…乙17文献において、培地に酵母抽出物やトリプトン等が含まれることが記載されていることからも明らかなように、培地成分等と混合した状態にある発酵液には種々のイオンが夾雑物として含まれているのであるから、このような発酵液にリン酸を添加したとしても、等しい物質量の酸及び塩基の中和反応によって5-アミノレブリン酸リン酸塩という化合物が製造されたと評価することはできない…。…そして、このほか、本件優先日当時の当業者が、5-ALAホスフェートの製造方法その他の入手方法を見出すことができたというべき事情は存しない。…
以上によれば、本件引用例に接した本件優先日当時の当業者が、思考や試行錯誤等の創作能力を発揮するまでもなく、本件優先日当時の技術常識に基づいて、5-ALAホスフェートの製造方法その他の入手方法を見出すことができたとはいえない。したがって、本件引用例から5-ALAホスフェートを引用発明として認定することはできない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/268/092268_hanrei.pdf

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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