令和4年(行ケ)10010【治療薬のCNS送達】<本多>

請求項1の文言から、本件発明1の薬学的組成物が「リン酸塩を含」むものであることは明らかで、50mMまでのリン酸塩であれば、どれほどわずかの量を含む場合であっても、本件発明1のリン酸塩に係る発明特定事項を満たすことは明確…
⇒明確性要件〇

 

技術常識を踏まえると、優先権基礎明細書に…組成物が実質的に記載されていたものと認められるのみならず、…組成物による送達の効果ICV投与した場合のものとして実質的に記載されていたと認められる必要がある。

⇒優先権主張× (しかし進歩性〇)

 

副引用文献に「製剤の発明」として開示無し 「甲6に、そもそも製剤の発明として引用発明を認定できる程度に…処方物が記載されているといえるかには疑問があり、仮にそれが記載されているとしても…容易想到で…ない」

【請求項1】…リソソーム酵素のレベルまたは活性の減少を伴うリソソーム蓄積症に罹患しているかまたは、これに罹患しやすい対象に脳室内投与されることを特徴とし、ここで、該組成物は、5mg/ml~100mg/mlの濃度の該補充酵素と、50mMまでのリン酸塩を含み、かつ該組成物が、5.5~7.0のpHを有することをさらに特徴とする、薬学的組成物。

(判旨抜粋)
…本件特許の請求項1の文言から、本件発明1の薬学的組成物が「リン酸塩を含」むものであることは明らかで、50mMまでのリン酸塩であれば、どれほどわずかの量を含む場合であっても、本件発明1のリン酸塩に係る発明特定事項を満たすことは明確であって、リン酸塩の下限値が特定されていないことが何ら第三者に不測の損害を被らせるものでないことは明らかである。

…技術常識を踏まえると、本件発明1が甲17に記載されていた発明であると認められるためには、甲17に、本件発明1の組成物が実質的に記載されていたものと認められるのみならず、甲17に、本件発明1の組成物による送達の効果が、ICV投与した場合のものとして、実質的に記載されていたと認められる必要がある…。…甲17には、投与の態様としてICV投与とIT投与とが選択的なものである旨は記載されているといえる一方で、いずれの方法によっても同様に送達され得る旨等を明らかにする記載もないから…ICV投与した場合のものとして、本件発明1の組成物による送達の効果を記載するものでもない…から、本件出願について、基礎出願2に基づく優先権を主張することはできない。

…甲6には、…処方物を投与した場合の送達や治療効果について具体的な記載がされているとは直ちに認め難く、また、IT投与の治療効果とICV投与の治療効果とを同視し得る旨等を明らかにする記載も見当たらない。…甲6に、そもそも製剤の発明として引用発明を認定できる程度に…処方物が記載されているといえるかには疑問があり、仮にそれが記載されているとしても、当業者において、ICV投与に係る甲2’発明に、IT投与に係る…処方物を適用して、本件発明1の構成に至ることが容易想到であったと認めるに足りる事情はない。…

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/007/092007_hanrei.pdf

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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