令和3年(行ケ)10111【レーザ加工装置】<菅野>

本件明細書中の図面から「溝」の不存在を看取できる⇒「溝が形成されている」構成を除くクレームの訂正OK
(図面から”不”存在を読み取れた裁判例は初めて)

⇒「溝」は主引例の必須構成であり、除くことは阻害事由あり。進歩性〇

(判旨抜粋)

<新規事項追加>
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明から、概念的に包含されていた「シリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されているシリコンウェハ」ないし溝必須装置を除くにすぎないから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正事項1により、請求項1に係る発明の「レーザ加工装置」に新たな技術的事項が追加されることはない。本件明細書の記載に照らしてみても、…本件明細書等の図1及び図3は、加工対象物1上の切断予定ラインが図示された平面図であるが、図1のII-II線に沿った断面図である図2、図3のIV-IV線に沿った断面図である図4のいずれにおいても、溝は形成されていないことが看取される。…図1ないし4によれば、「切断予定ライン」は記載されている一方で、「溝」は記載されていないところ、訂正前の本件発明において「溝」が存在することが前提となっているのであれば、「切断予定ライン」を記載しながら「溝」をあえて記載しないことは不自然というほかない。

<進歩性>
甲11文献に接した当業者が、基板201から、半導体ウエハーの切断に利用される内部応力をもたらす溝部203を捨象することは想定し得ず、加工対象物として、ブレイクラインに沿った溝が形成されていない基板201を採用し、表面に溝が形成されていない基板201の内部側に形成された加工変質部を形成するよう改変を行う動機付けは存在しないのみならず、このような改変にはむしろ阻害事由がある…。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/261/091261_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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