令和3年(行ケ)10085【印刷された再帰反射シート】<菅野>

課題解決のための不可欠の構成に係る複数の相違点は、一体の構成として容易想到性を検討すべき。

「…課題を認識することができず、こうした課題を前提として甲3記載技術を適用する動機付けはない。」
⇒進歩性〇

「…本件発明においては、…『表面保護層』と『保持体層』とが密着性があることは当然の前提とされているものであるから、被告の主張は、その前提を誤るものというべきであり、採用し得ない。」

⇒サポート要件〇

(判旨抜粋)

<進歩性>
本件発明は…従来技術の問題点を解決するために、①…②…③…④…に技術的意義があり、…②と③は、課題解決のための不可欠の構成であるといえる。そうすると、②と③に関する相違点1-1と1-4のそれぞれについて容易想到性を検討するのではなく、一体の構成として検討されるべきである(なお、仮に、個別に検討したとしても、本件結論は左右されない…)
…甲1発明は、カバー層18及びその片面又は両面に複数の点で均一なパターンで白色に着色された印刷層と、微小球16の間には空隙があり、カバー層18は材料片の端部に隣接する部分を除いて組立体に取り付けられていない構成であって、空隙部は再帰反射の光路を形成するために設けられたものであるから、甲1発明に接した当業者は、印刷部と第2の層14の間の空隙部に水等が侵入することで印刷層にふくれ等が生じ再帰反射性が低下することによる課題を認識することができず、こうした課題を前提として甲3記載技術を適用する動機付けはない。

<サポート要件>
…被告は、…本件審決は、「保持体層」と「表面保護層」とが接着していることが特定されていない点だけでなく、本件発明1の「独立印刷領域」がない部分の「保持体層」と「表面保護層」とが密着性が保たれるような幅で接着しているとはいえない点を問題にしており、上記構成を欠いた「再帰反射シート」が本件明細書…に記載された耐候性試験において「異常無し」との評価を得るに至らない態様が含まれる以上は、サポート要件違反が認められる旨主張する。しかし、本件発明においては、…「表面保護層」と「保持体層」とが密着性があることは当然の前提とされているものであるから、被告の主張は、その前提を誤るものというべきであり、採用し得ない。

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/498/091498_hanrei.pdf

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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