令和2年(行ケ)10122【ウデナフィル組成物を用いてフォンタン患者における心筋性能を改善する方法】<菅野>

 

*発明の課題は、運動耐容能の「改善」~医薬用途発明

(明細書で「維持」と「改善」を区別している)

⇒「改善」に使用できることが,当業者が理解できるように記載されている必要がある

実施可能要件×

 

*サポート要件も×

 

(判旨抜粋)

…本願明細書に接した当業者は,本件処方は,運動耐容能の改善をもたらし得ることを理解するものといえる(なお,本願明細書では最大努力時VO2測定値が「維持」される場合と「改善」される場合を区別しており(【0078】),最大努力時VO2測定値の単なる「維持」は「改善」には含まれないことを理解するものといえる。)…

本願発明は,…フォンタン手術を受けた患者における,最大努力時VO2により測定される運動耐容能の改善のため,シルデナフィルに比べ長い半減期を持つPDE5阻害剤の投与がフォンタン手術後に患者の有酸素運動能力の低下を防止又は改善することになるとの仮説の下に,PDE5阻害剤ウデナフィルが様々な病態に対して1日1回治療として有用であり得ることから,フォンタン患者に対してウデナフィルを特定量投与する医薬組成物としたものであり,医薬についての用途発明である。そうすると,本願発明が実施可能要件を満たすためには,本願明細書の発明の詳細な説明に,ウデナフィル又はその薬剤的に許容可能な塩の,1回当たり87.5mg,1日2回の投与により,フォンタン手術を受けた患者において,最大努力時VO2により測定される運動耐容能の改善に使用できることが,当業者が理解できるように記載されている必要がある。…

原告は,実際に症状が大幅に改善した患者がいるとするが…,本願明細書には,実施例3における試験結果全体が記載されているのであり,その記載内容を全体としてみれば,フォンタン手術を受けた患者に対し,本件処方が最大努力時VO2により測定される運動耐容能の改善に使用できることを当業者が理解できるとはいえない…。

 

 

 

090872_hanrei.pdf (courts.go.jp)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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