令和2年(行ケ)10075【包装体】<森>

 

※技術分野の共通性のみを根拠として、容易想到とできない。

※課題を具体的に認定し、主引例と副引例との課題が異なるとして、組み合わせる動機付け否定。

⇒進歩性〇

 

「甲1…包装時の容器の変形やチューブの歪みを防ぎ…甲3…主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高い…ことを課題とする」

 

 

(判旨抜粋)

甲1発明と甲3に記載された発明は,課題においてもその解決手段においても共通性は乏しいから,甲3記載事項を甲1発明に適用することが動機付けられているとは認められない。…

被告は,甲1発明と甲3記載事項は,熱収縮という作用,機能が共通する旨主張するが,熱収縮は,通常,弁当包装体が持つ基本的な作用,機能の一つにすぎないことを考慮すると,被告の上記主張は,実質的に技術分野の共通性のみを根拠として動機付けがあるとしているに等しく,動機付けの根拠としては不十分である。以上によると,甲1発明において,熱収縮性フィルムとして,甲3記載事項で示される熱収縮性フィルムを適用する動機付けがあると認めることはできない。

 

甲1発明及び甲3記載事項は,共に,弁当包装体という技術分野に属するものであると認められる…。しかし,甲1発明は,熱収縮性チューブを使用した弁当包装体について,煩雑な加熱収縮の制御を実行することなく,包装時の容器の変形やチューブの歪みを防ぎ,また,店頭で,電子レンジによる再加熱をした際にも弁当容器の変形が生じることを防ぐことを課題とするものである…のに対し,甲3に記載された発明は,ラベルを構成する熱収縮性フィルムについて,主収縮方向である長手方向への収縮性が良好で,主収縮方向と直交する幅方向における機械的強度が高いのみならず,フィルムロールから直接ボトルの周囲に胴巻きした後に熱収縮させた際の収縮仕上がり性が良好で,後加工時の作業性の良好なものとするとともに,引き裂き具合をよくすることを課題とするもの…である。そして,上記課題を解決するために,甲1発明は,非熱収縮性フィルム(21)と熱収縮性フィルム(22)とでチューブ(20)を形成し,熱収縮性フィルム(22)の周方向幅はチューブ全周長の1/2以下である筒状体であり,熱収縮性フィルム(22)の熱収縮により,弁当容器の外周長さにほぼ等しいチューブ周長に収縮して弁当容器に締着されてなるものとしたのに対し,甲3に記載された発明の熱収縮性フィルムは,甲3の特許請求の範囲記載のとおり,各数値を特定したものである。これらのことからすると,甲1発明と甲3に記載された発明は,課題においてもその解決手段においても共通性は乏しいから,甲3記載事項を甲1発明に適用することが動機付けられているとは認められない。

https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/112/090112_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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