令和2年(行ケ)10043【架橋アクリル系樹脂粒子】<森>

 

*臨界的意義を認めた

 

*本件発明の課題が知られていたことは証拠上認められない

 

「加熱減量の上限値1.5%を超える比較例…は,いずれも塗膜の表面性の評価が「C」となっているから…臨界的意義を有している」

 

⇒臨界的意義を認めたのはリップサービスであり、実質的には、異質な課題、異質な効果で進歩性を認めた。

本当に臨界的意義だけで進歩性を認めた4件とは異なることを、実務上把握しておくべきでろう。

 

 

(判旨抜粋)

…被告は,本件発明の加熱減量の上限値である1.5%は臨界的意義を有しないと主張する。しかし,本件明細書の【表1】によると,本件発明1の加熱減量の上限値1.5%を超える比較例1(加熱減量1.8%),比較例2(加熱減量2.2%),比較例4(加熱減量1.56%)は,いずれも塗膜の表面性の評価が「C」となっているから,加熱減量の上限値1.5%は,本件発明の臨界的意義を有していると認められる。この点に関する被告の主張は採用することはできない。…

…本件発明は,…架橋アクリル酸系樹脂粒子の揮発分が塗膜表面にムラなどを生じさせる結果,塗膜表面の傷付き性能の低下が生じてしまうことを解決することを課題としているところ,甲2-3には,このような本件発明の課題は現れていない。

また,…合成樹脂粒子の製造については,水分量を低減させ,残存モノマーを低減させることにより,その品質を向上させることが知られていたことは認められるが,…各証拠から,本件発明のように,粒子中の揮発分が表面ムラの発生や,塗膜表面の傷付き性低下などを生じさせていた…という課題や,この課題を解決するために,加熱減量を減ずるという構成を採用することが,本件優先日当時,当業者に知られていたと認めることはできないし,まして,本件発明の「加熱減量の上限値1.5%」が当業者に知られていたと認めることはできない。…

 

https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201002/jpaapatent201002_046-067.pdf?fbclid=IwAR3i85MgF0wLd2XL9OGP7NzjWJma-kCEE0IUqKvrrEhE4djT_JVSaLKlzgc

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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