令和2年9月24日東京地判平成28年(ワ)25436<矢野>【L-グルタミン酸の製造方法】

 

 

*課題を解決できない部分を含むからサポート要件×

⇒訂正の再抗弁で〇

 

「訂正前…は…特定の塩基配列を導入したコリネ型細菌を用いた発明を含むものであったが,…訂正…により…これらの発明が含まれなくなった。」

 

 

★サポート要件の立証責任は権利者であるが、無効審判請求人に、発明の課題を解決できない具体例を主張する責任はある。

⇒これに対し、当該具体例を除くように減縮すれば、サポート要件違反を免れる。

⇒最終的には、被疑侵害者は、被疑侵害品が発明の課題を解決できないと主張する必要があるのか…!?

 

 

(判旨抜粋)

本件発明1-1に記載された発明のうち,少なくともGDH遺伝子,CS遺伝子,ICDH遺伝子及びPDH遺伝子に変異を導入したコリネ型細菌によるアルギニンの製造方法については,本件明細書1の発明の詳細な記載により,当業者が,アミノ酸を高収率で生産する能力を有する変異株を遺伝子組換え又は変異により構築するとの前記の課題を解決できると認識できる範囲を超えるものであるといえる。また,これらの遺伝子の変異を用いたアルギニンの製造方法について,本件明細書1の記載のほかに,当業者が前記の課題を解決できるような出願時の技術常識があったとも認められない。…

訂正前の本件発明1-1は,ICDH遺伝子,PDH遺伝子又はアルギニノコハク酸シンターゼ遺伝子のプロモーター配列に特定の塩基配列を導入したコリネ型細菌を用いた発明を含むものであったが,本件訂正1により,本件訂正発明1-1には,これらの発明が含まれなくなった。したがって,本件訂正発明1-1について,ICDH遺伝子,PDH遺伝子及びアルギニノコハク酸シンターゼ遺伝子のプロモーターへの変異の導入についてのサポート要件違反及び実施可能要件違反は,いずれも認められない。

 

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/053/090053_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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