令和2年(ネ)10042【車両誘導システム】<本多>

明細書中の「課題」「効果」欄に過大な記載
⇒原審も控訴審も、課題/効果を考慮して解釈したが、控訴審では広めに解釈
⇒逆転充足

「発明の課題及び作用効果との関係で…被控訴人が主張するように特定されるとはいえない。」
「本件特許の特許請求の範囲の記載をみても、『第2のレーンへ誘導する誘導手段』が自動誘導である旨の記載はなく、本件明細書をみても、『誘導手段』に係員が関与することを除外する記載はない。…作用効果を奏することができる。」

(判旨抜粋)
本件各発明は、本件作用効果1(一般車がETC車用出入口に進入した場合又はETC車に対してETCシステムが正常に動作しない場合であっても、車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供すること)を奏するものであるところ、「通信手段」がETC車載器から受信したデータにより、ETCによる料金徴収が可能か判定され、各遮断機が適切なタイミングで動くことにより車両が安全に誘導できるのであれば本件作用効果1は奏するのであって、「通信手段」がETC車載器からデータを受信するタイミングにつき、車両が第1の遮断機を通過する前後のいずれであっても、本件作用効果1を奏することが可能である。また、本件作用効果2(ETCシステムを利用した車両誘導システムにおいて、逆走車の走行を許さず、或いは先行車と後続車の衝突を回避し得る、安全な車両誘導システムを提供すること)についてみると、本件各発明にいう「逆走車」には、料金不払などを目的として、ETC車用レーンの出口や離脱レーンの出口から遡ってETC車用レーンに逆進入する車両も含まれ、そのような「逆走車」の走行を防止することと、「通信手段」と「第1の遮断機」の位置関係とは関係がないことは明らかであるし、通信手段の位置にかかわらず、車両が第1の遮断機を通過した後に第1の遮断機を下ろすことで、後退による逆走を防止することができる。…したがって、本件各発明の課題及び作用効果との関係で、「通信手段」と「第1の遮断機」の位置関係が、被控訴人が主張するように特定されるとはいえない。…
本件特許の特許請求の範囲の記載をみても、「第2のレーンへ誘導する誘導手段」が自動誘導である旨の記載はなく、本件明細書をみても、「誘導手段」に係員が関与することを除外する記載はない。そして、被控訴人各システムにおいては、発進制御機[開閉バー]①及び⑤が人的操作によって開かれているものの、インターホンで係員を現地に呼び出す必要はないし、また、発進制御機[開閉バー]①及び⑤が開くことで、車両は第2のレーンの方向に前進することができるので、バック走行によりレーンから出ようとするおそれはないから、「インターホンで係員を呼び出す必要があるので渋滞が助長されること」、「車両がバック走行をして出ようとすると後続の車両と衝突するおそれがあって危険であること」という本件各発明の課題を解決することができ、「車両を安全に誘導する車両誘導システムを提供する」、「先行車と後続車の衝突を回避し得る安全な車両誘導システムを提供する」という作用効果を奏することができる。なお、本件各発明においても、車両が第1の遮断機の手前で停止することが想定されているといえる…。そうすると、「第2のレーンへ誘導する誘導手段」について、被控訴人の主張するとおりに限定的に解釈すべき理由はなく、上記被控訴人の主張は採用できない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/286/091286_hanrei.pdf

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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