令和1年(ワ)23164【画像形成装置】<田中>

*子出願が分割要件違反
⇒孫出願の出願日は、子出願の現実の出願日までしか遡及しない
=大高H14(ネ)2776
=東高H15(行ケ)65

*明細書の追加記載が分割要件違反の理由とされた。
⇒人工乳首事件(東京高裁平成14年(行ケ)539)以来!?

(判旨抜粋)
…本件特許出願は,本件出願1の分割出願である本件出願2に係る,更にその分割出願である本件出願3に係る,更にその分割出願に係る特許出願であるところ,被告は,本件出願2が分割要件違反になる旨を主張するので,この点について検討する。
…分割出願が適法な場合には,その効果は原出願の出願日に遡及する(特許法44条2項本文)が,分割出願が不適法な場合には,分割出願をした時点を基準として実体審査が行われることになる。そして,分割出願の出願日が原出願の出願日へ遡及するためには,①分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内であること,及び,②分割出願の明細書等に記載された事項が,原出願の分割直前の明細書等に記載された事項の範囲内であることを要するものと解するのが相当である。なお,原出願の明細書等について補正をすることができる時期に特許出願の分割がされた場合には,上記①の要件が満たされれば,上記②の要件も満たされるものと解されるところ,本件出願2は…本件出願1の明細書等について補正をすることができる時期…にされたものではないことからすれば,本件出願2の分割要件としては上記①の要件とは別に,上記②の要件を満たすことも必要となると解される。…
…本件出願2が分割出願された時点における本件出願1の明細書等,すなわち,本件出願1の特許査定時の明細書等…と,本件出願2の明細書等(本件出願2分割時明細書…)とを比較すると,本件出願2分割時明細書は,例えば,指定キープ指示部によって,電源OFF後も加工条件をキープし,次回以降最初に表示される画面に表示することに関する記載が追加されている点(段落【0100】),倍率を指示する「一つ上」や「一つ下」の表示によって,使用頻度の高い加工条件である倍率の設定数を減らし,メニューの設定数を減らすことに関する記載が追加されている点(段落【0105】),登録されたメニューを変更不可にロックする手段を設けることによって,安易なメニュー変更による誤指示を防止することに関する記載が追加されている点(段落【0145】),図7ないし図15及びこれに関連する記載が追加されている点(段落【0041】…)で,本件出願1査定時明細書の記載と相違しており,本件出願2分割時明細書は,本件出願1査定時明細書には存在しない記載事項を含むものであるから,本件出願1査定時明細書に記載された事項の範囲内であるとはいえない…。そうすると,本件出願2は,…②の分割要件を満たさないから,分割要件違反となるものというべきであり,本件出願2には特許法44条2項の適用がない。
…以上によれば,本件特許出願が本件出願3に対して分割要件を満たし,本件出願3が本件出願2に対して分割要件を満たすとしても,本件出願2は本件出願1に対して分割要件を満たしていないから,本件出願2の出願日は,本件出願1の出願日まで遡及せず,現実の出願日…であることとなり,同様に,本件特許出願の遡及する出願日は,本件出願2の出願日…となる。

https://www.nakapat.gr.jp/ja/legal_updates_jp/%e3%80%90%e7%89%b9%e8%a8%b1%e2%98%85%e2%98%85%e3%80%91%e5%af%a9%e6%b1%ba%e5%8f%96%e6%b6%88%e8%ab%8b%e6%b1%82%e4%ba%8b%e4%bb%b6%ef%bc%88%e8%a6%aa%e3%83%bb%e5%ad%90%e3%83%bb%e5%ad%ab%e3%81%a8/

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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