令和1年(ワ)23407【…吊張り…装置】<柴田>

「調整手段」の文言解釈
⇒クレームアップされていないが、差分が認識された上で予め調整することが課題解決原理として明細書に記載されており、他の手段で解決する方策が記載無かった。
⇒課題を解決できる範囲に限定解釈した。

被告製品は、通常用いられる連結材であり、調整していない。
⇒非充足

(判旨抜粋)
…本件発明の「調整手段」(構成要件C)とは,吊張体を過不足なく適切に吊り張りするため,認識された本件差分を基準としてこれに合うように長さをあらかじめ変更するための手段であると解される。なお、…吊張り装置に何らかの長さ変更を行う構成があったとしても,本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更するための手段であると認められないものは,本件発明の「調整手段」とはいえないと解される。仮に,本件発明において,単に長さを変更する手段のみをもって調整手段に該当すると解するとすれば,吊張体の施工やメンテナンスに際して吊り上げワイヤー等の長さを変更するに当たり,他の手段によって,本件差分を基準としてこれに合うようにしなければならないことになるが,そのような作業を床面側のみで行うことが可能であることは本件明細書の記載等によっても明らかではなく,このような構成によっては本件発明の課題を解決することができない。ここで,本件明細書には,吊り上げワイヤーにネット体への係止体を設けることで,又は,ネット体に吊り上げワイヤーの係止体を設けることで,吊り上げワイヤーの長さの調整を行うこともできることが記載されている(段落【0058】)。これまで述べてきたところから,そのような係止体が,認識された本件差分を基準としてこれに合うように吊り上げワイヤー等の長さをあらかじめ変更するための手段といえる場合には,本件発明の「調整手段」といえ,上記記載はその趣旨のものと理解することができる。それに対し,そのような手段とはいえず,通常の係止体としての構成,機能を超える構成,機能等を有しないものは,これまで述べたところに照らせば,本件発明と関係なく用いられている 係止体であり,本件発明の「調整手段」が有する効果を奏するものではなく,本件発明の「調整手段」に該当するとは認められない。…被告製品…のワイヤークリップは,ワイヤーを係止する際に通常 用いられる連結材と認められる…。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/574/090574_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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