平成29年(行ケ)10096<鶴岡> 〔非磁性材粒子分散型強磁 性材スパッタリングターゲット〕一次判決
*パラメータ発明の進歩性を否定する 典型的なロジックの一つ
①数値範囲に技術常識が含まれる
②引用発明の数値を増加する動機付けあり
③数値に技術的意義・格別な効果なし
(判旨抜粋)
甲1発明におけるSiO2粒子(非磁性材)の含有量を「3重量%」(3.2mol%)から「6mol%以上」とすることについて,当業者が容易に想到できるといえるか否かを検討する。…本件特許の優先日当時,垂直磁気記録媒体において,非磁性材であるSiO2を11mol%あるいは15~40vol%含有する磁性膜は,粒子の孤立化が促進され,磁気特性やノイズ特性に優れていることが知られており,非磁性材を6mol%以上含有するスパッタリングターゲットは技術常識であった。そして,…優れたスパッタリングターゲットを得るために,材料やその含有割合,混合条件,焼結条件等に関し,日々検討が加えられている状況にあったと認められる。そうすると,甲1発明に係るスパッタリングターゲットにおいても,酸化物の含有量を増加させる動機付けがあった…。…
次に,具体的な含有量の点についてみると,被告も,非磁性材の含有量を「6mol%以上」と特定することで何らかの作用効果を狙ったものではないと主張している上,証拠に照らしても,6mol%という境界値に技術的意義があることは何らうかがわれない。…甲1発明に基づいて非磁性材である酸化物の含有量が6mol%以上であるターゲットを製造することに技術的困難性が伴うものであったともいえない。…効果は,ターゲット中の非磁性材が3mol%…という甲1発明と同様のものにおいても認められるというのであって,…非磁性材の含有量を6mol%以上とすることによって格別の効果を奏するものと認めることはできない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/749/087749_hanrei.pdf
https://system.jpaa.or.jp/patents_files_old/201002/jpaapatent201002_046-067.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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