令和3年(行ケ)10090【噴射製品および噴射方法】<大鷹>
*公然実施品に目的が表れていなくても、物の効果が客観的に把握できれば一致点である。⇒進歩性×
公然実施品の「水」が本件発明の「揮発抑制成分」に該当するかは、噴射後の揮発を抑制するための成分であることを客観的に把握できるかで判断する。
⇒添加目的や揮発抑制成分として認識されていたかに左右されない。
*訂正要件×
ある構成によって奏される作用効果を記載しただけでは、減縮とならない。
(判旨抜粋)
<進歩性>⇒進歩性×
公然実施発明1-1に含まれる「20℃での蒸気圧が2.3366kPaである水」は、本件発明1の「揮発抑制成分」に該当するものと認められるから、相違点1は実質的な相違点であるとは認められない。…この点に関し、本件審決は、公然実施発明1-1には、水が含まれているが、甲2によれば、水は、「溶剤」として添加されたものであり、噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたとは認められないことを、相違点1が実質的な相違点であることの理由の一つとして挙げている。しかしながら、物の発明に係る特許の特許請求の範囲は、その構造、特性等により特定されることに照らすと、公然実施発明1-1に含まれる「水」が本件発明1の「揮発抑制成分」に該当するかどうかは、当該「水」が噴射後の揮発を抑制するための成分であることを客観的に把握できるか否かによって判断すべきであるから、水の添加目的や、水が噴射後の揮発を抑制するための揮発抑制成分として認識されていたかによって上記判断は左右されるものではない。
<訂正要件>⇒訂正要件×
訂正事項1は…「噴射製品」を「粘膜への刺激が低減された、噴射製品」と訂正し、訂正事項2は…「噴射方法」を「粘膜への刺激を低減する、噴射方法」と訂正するものであり…「噴射製品」及び…「噴射方法」の各記載事項に、それぞれ「粘膜への刺激が低減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項を加えたものと認められる。…
本件明細書には、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成にした場合であっても、「粘膜への刺激の低減」の作用効果を奏しない場合があることについての記載も示唆もない。そうすると、訂正事項1及び2により加えられた「粘膜への刺激が低 減された」又は「粘膜への刺激を低減する」という作用に係る記載事項は、本件訂正前の請求項1及び3の上記各構成によって奏される作用効果を記載したにすぎないものであるから、訂正事項1及び2は、本件訂正前の請求項1及び3の各発明に係る特許請求の範囲を狭くしたものと認めることはできない。…したがって、訂正事項1及び2は、「特許請求の範囲の減縮」…を目的とするものと認めることはできない…。
https://www.ip.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/366/091366_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)