令和4年(行ケ)10017【感圧転写式粘着テープ】<菅野>
<明確性要件>
*「紙破現象を起こし得るように構成している」というクレームアップされた効果を満たさない物は、本件発明から排除されている。
⇒「紙破現象」の発生割合や発生条件が特許請求の範囲で特定されていなくても明確性要件〇
<進歩性>
*引用文献と数値範囲が重なっても、「紙破現象を起こし得る」というクレームアップされた効果との関係で有意な数値として開示されていない。⇒相違点
*「紙破現象」を起こさない構成も、比較例として説明されている。
(判旨抜粋)
<明確性要件>
…本件明細書の記載及び図面を総合すると、本件発明1における「紙破現象」とは、粘着製品の粘着剤層を剥離させた際に紙類の表層が粘着剤に付着し、紙類が厚み方向に破断する現象をいうものであると理解することができる。そして、本件発明1の「紙破現象を起こし得るように構成している」との発明特定事項は、その他の構成要件を充足する「感圧転写式粘着テープ」のうち、「紙破現象を起こし得る」ように構成されているものと解することができ、「紙破現象を起こし得ない」構成は、本件発明1の技術的範囲に含まれないものと理解することができる。そうすると、「紙破現象」の発生割合や発生条件について本件発明1に係る請求項1には特定されていないとしても、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の損害を被らせるほど不明確な記載であるとはいえない。
<進歩性>
…上市されている「永久接着タイプ」のテープ糊は全て「紙破現象を起こし得る」ものであることを裏付ける証拠がないことは措くとしても、…本件発明1は…「パターン塗工」が前提となっているところ、本件明細書…によれば、パターン塗工を施した比較例の中で紙破し得る特性を示したものはなかったとされており…比較例9等…は、「パターン塗工適性試験に採用された塗工パターンにおける粘着剤の配置と略同様の部位に位置する粘着剤のみが粘着力を示すように粘着剤層を部分的に不活性化させた」ことが明らかにされている。…また、原告は…相違点3及び4について、原告主張の各文献記載の数値範囲と重なることから、周知技術の範囲内といえる旨主張するが、各文献に記載された数値範囲が紙破現象との関係で有意な数値として開示されているものではない…当を得ない主張である。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/543/091543_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)