【不競法/営業秘密侵害罪/刑事】名古屋地判平成29年(刑ワ)427
被告人は、愛知製鋼の元従業員であり、マグネデザイン社を起業した。
⇒無罪(検察官は控訴断念)
被告人の第三者への説明は抽象化、一般化され過ぎていて、ありふれた方法の組み合わせに留まる。
⇒非公知性否定(故意も否定)
(判旨抜粋)
「本件打合せにおいて被告人両名がeに説明した情報は,アモルファスワイヤを基板上に整列させる工程に関するものではあるが,bの保有するワイヤ整列装置の構造や同装置を用いてアモルファスワイヤを基板上に整列させる工程とは,工程における重要なプロセスに関して大きく異なる部分がある。また,上記情報のうち検察官主張工程に対応する部分は,アモルファスワイヤの特性を踏まえて基板上にワイヤを精密に並べるための工夫がそぎ落とされ,余りにも抽象化,一般化されすぎていて,一連一体の工程として見ても,ありふれた方法を選択して単に組み合わせたものにとどまり,一般的には知られておらず又は容易に知ることができないとはいえないので,営業秘密の三要件(秘密管理性,有用性,非公知性)のうち,非公知性の要件を満たすとはいえない。したがって,被告人両名は,本件打合せにおいて,bの営業秘密を開示したとはいえない。
また,仮に,被告人両名の行為が客観的には営業秘密開示行為に該当するという見解を採ったとしても(この仮定は,当裁判所の見解ではない。),被告人両名において,本件打合せでeに説明した情報について,bの営業秘密に該当しないと考えていた疑いが残り,そのように考えたことについて,相当な理由があるといえることなどからすると,被告人両名について,故意責任を問うことはできない。
よって,被告人両名は無罪である。」
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/195/091195_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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