令和5年1月31日判決大阪地判平成29年(ワ)4178<武宮>【シュープレス用ベルト】
公然実施品に含まれる硬化剤に着目できた。
⇒新規性×
「通常の方法で分解,分析すれば知ることができた。」(平成27年(行ケ)10069【棒状ライト】事件<設樂>)というメルクマールと同じか?
⇒先使用権の知財高判平成29年(ネ)10090<高部裁判長>に通ずる要注意判決!!
被告製品全体が数値範囲内に含まれる必要あり!
⇒非充足
★本判決によれば、「その字義どおり」としては被告製品の全体に亘って数値範囲に入る必要があり、例外を許容する記載がクレーム文言又は明細書中に必要となる…
(判旨抜粋)
原告は、ベルトの現物自体からは当該ベルトが幾つの層によって構成されているか等を把握することは不可能であること、ベルトを構成するポリウレタンは様々な化学物質で構成されているから、外周面を構成するポリウレタンに含有される硬化剤に着目した分析が行われたとはいえないこと、当時、硬化剤として考え得る候補物質は極めて多数存在していた上に、エタキュアー300を用いることでクラックの発生を抑制できることは当業者においてすら知られていなかったから、硬化剤としてDMTDAに着目し、これをわざわざ入手してサンプルとして分析機関に送付し、分析を依頼したとは到底いえないことを指摘して、ベルトBを日本製紙に納品したとしても、ベルトBの外周面に硬化剤としてDMTDAが含有されていたことが特定できたとはいえない旨を主張する。しかし、…ベルトBは、日本製紙に納品され、自由に解析等をなされ得る状態におかれたものであり、解析等によりベルトの構造等を特定することは可能であるほか…、本件特許1の出願前に、エタキュアー300は、ウレタン用の硬化剤として注目され、実用化されていたものと認められ、分析機関のライブラリにDMTDAのマススペクトルが登録されていなかったとしても…、エタキュアー300をサンプルとして分析機関に送付して分析を依頼した蓋然性があったといえ、当業者は、公然実施発明Bの内容を知り得たものと認められる。…
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/743/091743_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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