<論稿>「拡大先願に関する裁判例の傾向分析」(2019.1、弁理士会特許委員会)

 

<拡大先願違反と新規事項追加との関係>

 

先願の後願排除効の範囲は,制度趣旨に照らして…補正/訂正/分割が許されるか否かの基準である,新規事項追加に該当するか否かの判断基準と一致する筈である。

 

例外~平成26年(ネ)10080

 

例外として,平成 26 年(ネ)第 10080 号「スピネル型マンガン酸リチウムの製造方法」事件は,「…本件明細書には,『結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実質的に含む』形態を除くスピネル型マンガン酸リチウムについて明示的な記載はなく,また,これが本件明細書の記載から自明な事項であるということも

できないから,『(結晶構造中にナトリウムもしくはカリウムを実質的に含むものを除く。)』との技術的事項が,本件明細書に記載されているということはできない。」と判示して,「除くクレーム」の訂正を新規事項追加とした。もっとも,同判決の事案は,化学物質の構造式の一点を除く典型的な除くクレームの事案とは異なるため,一般化できるかは慎重な検討が必要である。何れにしても,この点の是非については,今後の検討課題となろう。

 

 

拡大先願に関する裁判例の傾向分析 (jpaa.or.jp)

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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