部分優先④

 

平成16年(ネ)1563<塚原>【レンズ付きフィルムユニット】

 

優先権主張出願で、実施例を追加した

⇒優先権〇⇒29の2違反なし

Cf. 人工乳首事件

 

「第3実施例は…本件発明の要旨の範囲内で,フィルムの巻込み,巻取りないし巻上げ手段等に関して具体的な1態様を示したものにすぎない」

 

(判旨抜粋)

…本件発明におけるフイルムの巻込み,巻取りないし巻上げについては…構成要件E及びFに記載された程度の特定によって構成されているのであって,それ以上に,具体的にどのような構成の装置により,どのようなメカニズムでフィルムを的確に巻き込み,巻き取りないし巻き上げるかなどという手段等に関する構成については,特段の限定はない…。…第3実施例の特徴としては,フィルムの巻込み,巻取りないし巻上げ手段等に関する詳細な構成とそのメカニズムが記載されている点がある。しかしながら,…優先出願③の出願日以前から,フィルムの巻込み,巻取りないし巻上げ手段等に関する構成については種々の周知技術が存在し,第3実施例によって示された機能や効果は,上記証拠によって認められる周知技術によって達成される機能,効果と比べて格別のものであるとは認められない。本件発明は,当然に上記のような周知技術を踏まえているものと解され,その上で,構成要件Fは,上記のように「…フイルムをパトローネ内に巻き込み可能としている」とのみ記載し,具体的にどのような構成の装置により,どのようなメカニズムでフィルムを的確に巻き込み,巻き取りないし巻き上げるかなどという手段等に関する構成については,特段の限定はしなかったものと解するのが相当である。そうすると,第3実施例は,上記のように認定される本件発明の要旨の範囲内で,フィルムの巻込み,巻取りないし巻上げ手段等に関して具体的な1態様を示したものにすぎないのであり,上記の要旨認定を変更すべきようなものではないというべきである(…本件発明は,第1実施例により十分に裏付けられているものと認められ,仮に,第3実施例の記載がなくても,その裏付けに欠けるところはない。)。…

結局,本件発明の技術的事項は,全て優先出願③の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されている。…

以上によれば,本件発明は,「優先出願③の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明」であるといえるので(換言すれば,「本件発明のうち,『優先権の主張の基礎とされた優先出願③の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明』」とは,本件発明(の全体)そのものであるといえるので),平成5年改正前の特許法42条の2第2項に基づき,優先出願③の出願時である昭和61年10月17日に出願されたものとみなされるのであるから,本件考案の実用新案登録出願が存在したからといって,本件特許が特許法39条3項に違反し,無効であることにはならない。

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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