東京高判平成14年(ネ)1589<塚原>
=原審・東京地判平成14年(ワ)25697<三村>
【液晶組成物】

「~からなる」というクレーム文言⇒他の第三成分を排除する趣旨で使用するのが通常

発明の詳細な説明は、クレームアップされた成分以外が望ましくないと説明している
⇒非充足

(判旨抜粋)
…「AとBからなる」との文言は,AとB以外の第三成分を排除する趣旨で使用するのが通常であるから,本件明細書の特許請求の範囲や発明の詳細な説明 にAとB以外の第三成分を明示的に加える旨の記載があるなどの特段の事情が認められない限り,「AとBからなる」との文言が「AとBを用いている」との文言と同様にAとB以外の第三成分を排除する意味合いがないと解することはできない。…また,本件明細書の発明の詳細な説明には,非カイラル剤として,一般式(Ⅰ)で表されるもの以外のものをさらに混合させることについて何ら記載されていない上,「-CN基やカルボン酸エステル構造を官能基として有する化合物は,得られる液晶素子の電圧保持率を高く維持するという観点からは本発明の非カイラルな成分として不適当である。同様にこれらのCN基やエステル基等の官能基を有するカイラルな化合物は吸着性が大きいために,更にまた電圧 保持率の観点からも本発明のカイラルな成分としては一般的に言って望ましくない。」…,「表3から,式(Ⅹ)の化合物(判決注:カイラル剤化合物)はエステル化合物であっても混合物Aの成分に比べて著しく大きな分子量を有し吸着性がフッ素系化合物とほぼ同程度であることから本発明の組成物の成分として好ましく用いられる。」…と記載されている。これらの記載によれば,本件特許発明の構成要件Dにいう「液晶組成物」には,一般式(Ⅰ)で表される非カイラル化合物のほか第三成分としてエステル基(-COO-)含有化合物を含むものと解することはできない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/803/009803_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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