東京地判平成20年(ワ)2944【ノーマルクローズ型流量制御バルブ】<損害論>102条2項
認容額3億9620万円
寄与度40%(60%覆滅)
<推定覆滅事由>
代替技術の存在~圧力式制御装置とサーマル式流量制御装置は,そもそも,流量制御の基本的な考え方を異にするものであり,一方が他方の改良製品であるというわけではなく,その性質についても一長一短があることから,利用者がどちらの方式を採用するかは,各装置の特長を勘案して制御対象に最適なものを選択する。また,被告が主張する被告製品の特長の多くは,上記のとおり,マスフローコントローラーであっても,顧客から同様の仕様希望があれば原告において対応することが可能であった。
(判旨抜粋)<覆滅事由>
・・・以上のとおり,圧力式制御装置とサーマル式流量制御装置は,そもそも,流量制御の基本的な考え方を異にするものであり,一方が他方の改良製品であるというわけではなく,その性質についても一長一短があることから,利用者がどちらの方式を採用するかは,各装置の特長を勘案して,制御対象に最適なものを選択するものといえる。また,被告が主張する被告製品の特長の多くは,上記のとおり,マスフローコントローラーであっても,顧客から同様の仕様希望があれば原告において対応することが可能であったと認められる。
(中略)
前記8で認定した事情を総合的に考慮すると,被告製品の売上げに対する本件発明の寄与度は,40%とするのが相当である。
これに対し,被告は,①被告製品は販売先との共同開発品であること,②被告製品は原告製品にない特長(圧力センサによる流量の制御)を有していること,③原告は,被告製品の販売先への販売実績がなく,同販売先は従前原告以外の会社からマスフローコントローラーを購入していたことなどを理由に,本件特許権侵害がなかったとしても原告が被告製品の販売先に原告製品を販売することができた可能性はなく,被告製品の販売利益相当額の損害を被ったものではないと主張する。しかしながら,前記8で認定した事情に照らすと,必ずしも,被告製品の方が原告製品と比べて優れているとか,競合会社の製品の方が原告製品より優れており,被告製品の購入先は被告製品が販売されなければ競合会社の製品を購入したはずであるということはできず,これらの事情があると認めることはできない。したがって,本件において,特許法102条2項の推定を覆す事情があるとは認められない。
https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/244/081244_hanrei.pdf
※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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