審判実務者研究会2021《事例1》P12
平成31年(行ケ)10026【流体圧シリンダ及びクランプ装置】<鶴岡>

補正により削除される事項が、発明の課題解決のための主たる手段
⇒ 補正要件違反

~構成の主従を明記すると、主が必須と判断され、主を削除する補正/分割が出来なくなる。

(判旨抜粋)
本件補正は,「弁体」を有する「開閉弁機構」について,本件補正前の請求項1から「この弁体が当接可能な弁座と,前記流体室の流体圧によって前記弁体を前記出力部材側に進出させた状態に保持する流体圧導入室と,前記流体室と前記流体圧導入室とを連通させる流体圧導入路とを備え」という発明特定事項を削除し,「前記弁体の前記大径軸部を前記流体室側に弾性付勢して前記弁体を前記流体室側に進出させた状態に保持する弾性部材と…を含」むという発明特定事項を新たに導入する内容を含むものである。したがって,本件補正後の本件発明1には,弁体を出力部材側に進出させた状態に保持する構成として,流体室の流体圧を利用するための流体圧導入室及び流体圧導入路を備えることなく,弾性部材のみとする構成も含まれる…。
…実施例2において,油圧導入室53と油圧導入路54は,発明の効果と結びつけられた構成といえる。…
…実施例2の構成は,油圧導入室53と油圧導入路54を備えることによる油圧による付勢を主とし,圧縮コイルスプリング53aによる付勢を補助的に用いるものである…。かかる構成から,主である油圧による付勢に係る構成をあえてなくし,補助的なものに過ぎない圧縮コイルスプリングのみで付勢するという構成を導くことはできないというべきであり,実施例2においては,油圧導入室53と油圧導入路54が発明の効果と結びつけられて記載されていること…を考慮するとなおさらである。…
開閉弁機構に流体圧導入室及び流体圧導入路を設けることなく,弾性部材のみによって弁体を出力部材側に進出させた状態に保持する構成は,当業者によって本件当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項とはいえない。

https://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/kenkyukai/document/sinposei_kentoukai/2021_houkokusyo_honpen.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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