平成30年(ネ)10034【ソレノイド】<菅野>

端部部材それ自体によって「密封」される必要があるか否かのクレーム文言解釈の判断が変更され、特許権者が逆転勝ち!!
⇒Oリングと併せて効果を発揮するから充足。

控訴審逆転の7割以上はクレーム文言解釈の変更

発明の詳細の説明のどの段落に着目するかで結論が左右された。

⇒控訴審で特許権者逆転勝訴(H29(ワ)3569)
*一審と控訴審ともに、「密封嵌合」の解釈が争点。
⇒結論は逆。

【請求項1】…取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材…を設けることを特徴とするソレノイド。

(判旨抜粋)…どの程度の「ぴっちりと封をする」ように機械部品が「嵌合」すれば本件発明における「密封嵌合」に当たるかについては特許請求の範囲の記載からは必ずしも一義的に特定されるものではないから、用語の意義を解釈するために本件明細書の記載を見てみると、本件明細書には、「前記取付孔に密封嵌合して該取付孔の開口部を塞ぐ耐食性材料による端部部材を備えることを特徴とする。」(段落【0015】)、「これにより、取付孔の内部に収容されたソレノイドの端部部材より奥側の部材は外部に露出されることはなく、また、外部雰囲気(湿気や水などの流体)の進入が端部部材により抑制されるので、相手側ハウジング部材に組み付けられた状態における耐食性を向上させることが可能となる。」(段落【0016】)との記載がある。こうした本件明細書の記載を踏まえると、…「密封嵌合」における「密封」とは、外部雰囲気(湿気や水等の流体)の進入を「抑制」する程度のものを指す…。…また、本件発明は、「外部雰囲気の進入を抑制するために前記取付孔と前記端部部材との間に配置されるシール部材」(…)との発明特定事項を有しており、本件明細書には、「前記取付孔と端部部材との間にシール部材を備えることも好適である。これによって、より外部雰囲気の進入が抑制される。」(【0019】)との記載があることから、本件発明における「取付孔と端部部材との間に配置されるシール部材」も、より外部雰囲気の進入を抑制するために設けられる部材であるということができる。このように、本件発明は、外部雰囲気の進入を抑制する構成として、①…端部部材と、②…シール部材の2つの構成によって…ソレノイドの耐食性の向上という本件発明の効果がもたらされると解されるのであるから、「端部部材」のみによって外部雰囲気の進入を完全に抑制する必要があると限定して解釈する理由もない。
被告製品は…プレートの外側の端部にはシール部材が設けられており、前記取付孔に収容されると、ボディと取付孔の間を密封して外部の空気、水分等が進入するのを抑制する…構成を有していることは当事者間に争いがない。…
乙1実験、乙14実験、甲49実験、甲58実験、乙19実験及び乙20実験の試験結果によれば、端部部材とシール部材(Oリング)を備えた被告製品においては、外部雰囲気(湿気や水等)の流入が完全に抑制されていることが認められる。そうすると、被告製品は、端部部材(H)をボディの上部側の開口部に嵌合させることにより外部雰囲気の流入を抑制し、シール部材の構成を備えることにより、ボディと取付孔の間を密封して外部雰囲気の流入をより抑制する効果を奏するものであるから、被告製品は…「『密封』嵌合」の文言も充足する。…

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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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