進歩性判断における「付加」と「置換」

 

①主引例「A」、副引例「B」

⇒単なるBの付加

 

平成28年(行ケ)10061【入退室管理システム】事件<鶴岡>

 

*引用発明が引用文献に記載された実施例に限られないとした。

 

⇒引用発明がAならばBに変更する動機付けが必要。引用発明に限定なければ進歩性を否定し易い。

 

Cf.H29(行ケ)10062

 

 

(判旨抜粋)

…刊行物1には,実施例として,複数の固定無線機が施設の所定の各部屋にそれぞれ設けられる構成が示されている…。しかしながら,複数の固定無線機の設置位置を「施設の各部屋」に限定することと課題解決手段との間に特に技術的関連性があるとは認められず,また,そのような限定がなくとも,刊行物1発明の課題を解決し作用効果を奏することは可能であると認められるから,同発明を上記実施例に係る技術内容に限定してしまうことは相当でない(上記実施例の記載は,飽くまで発明の一実施態様を示したものにすぎず,そのことにより刊行物1から他の態様による実施が読み取れないとはいえない。)。したがって,引用発明Aについても…かかる技術内容に限定することは相当でなく,本件訂正発明1との対比は,飽くまで複数の固定無線機の設置位置が「施設の各部屋」を含むがこれに限定されないものとして認定した引用発明Aをもってなされるのが相当である。…

上記のように相違点1´を認定した場合,仮に同相違点に係る構成(移動体の位置検出を行うために複数の起動信号発信器を出入口の一方側と他方側に設置する構成)が本件特許の出願時において周知であったとすれば,引用発明Aとかかる周知技術とは,移動体の位置検出を目的とする点において,関連した技術分野に属し,かつ,共通の課題を有するものと認められ,また,引用発明Aは,複数の固定無線機の設置位置を特定(限定)しないものである以上,前記の周知技術を適用する上で阻害要因となるべき事情も特に存しないことになる…。

 

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/763/086763_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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