平成28年(ネ)10023【メニエール病治療薬】<設樂>

 

*用途発明の「実施」についての一般論

⇒構成要件の範囲外

 

*「成人1日あたり0.15~0.75g/kg体重のイソソルビトールを経口投与されるように用いられる」とは、典型的な用途でない

 

「用途発明とは,既知の物質について未知の性質を発見し,当該性質に基づき顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とする」

 

⇒未知の物質の用途限定は,「用途発明」ではなく、発明の技術的範囲は限定されない。

 

(判旨抜粋)

…用途発明とは,既知の物質について未知の性質を発見し,当該性質に基づき顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とするものであるから,用途発明における特許法2条3項にいう「実施」とは,新規な用途に使用するために既知の物質を生産,使用,譲渡等をする行為に限られると解するのが相当である。…本件発明は,イソソルビトールという既知の物質について投与量を減少させると血漿AVPの発生を防ぎ,かえって内リンパ水腫減荷効果を促進させるという未知の性質を発見し,当該性質に基づきイソソルビトールの投与量を減少させることによって,即効性を有しかつ長期投与に適するメニエール病治療薬としての顕著な効果を有する新規な用途を創作したことを特徴とするものであるから,本件発明は,イソソルビトールという既知の物質につき新規な用途を創作したことを特徴とする用途発明であるものと認められる。

被告製品の添付文書及びインタビューフォームにおける用法用量は,1日体重当り1.5~2.0mL/kgを標準用量とするものであって,かえって,本件明細書にいう従来のイソソルビトール製剤の用量をも超えるものであるから,構成要件Aによって規定された上記用途を明らかに超えるものと認められる。

以上によれば,被告は,イソソルビトールについての上記新規な用途に使用するために,これを含む被告製品を製造販売したものということはできないから,被告製品を製造販売をする行為は,本件発明における特許法2条3項の「実施」に該当するものと認めることはできない。                   http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/049/086049_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)