平成23年(行ケ)10127【旋回式クランプ】<塩月>

請求項1及び2は、基礎出願と同じクレーム文言
⇒優先権が認められる!!(が、それでも進歩性×)

追加した請求項3は新規事項追加

*Claim Differentiation

⇒請求項毎に、追加した請求項だけが新規事項追加として優先権主張×

(判旨抜粋)
本件発明3の特許請求の範囲では,「請求項1または2の旋回式クランプにおいて,」との特定がされ,本件発明1又は2の構成を引用しているものであるが(従属項),本件発明1では,クランプロッドのガイド溝につき,「周方向へほぼ等間隔に 並べた複数の」との限定,「第2摺動部分(12)に設けた複数の」との限定や「上記の複数のガイド溝(26)は,それぞれ,上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とを備え,上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し,」との限定が付されているにすぎない。また,本件発明2でも,クランプロッドのガイド溝につき,「前記ガイド溝(26)を3つ又は4つ設けた」との,ガイド溝の個数に関する限定が付されているにすぎない。
そうすると,本件発明1,2では,ガイド溝の傾斜角度に関する特定はされていないから,上記傾斜角度に関する本件発明3の発明特定事項である「傾斜角度を10度から30度の範囲にした」との事項が第1ないし第3基礎出願に係る明細書(図面を含む。)で開示されていないからといって,本件発明1,2が上記事項を発明特定事項として含む形で特定されて出願され,特許登録されたことになるものではない。この理は,例えば請求項3(本件発明3)が特許請求の範囲の記載から削除された場合を想定すれば,より明らかである。したがって,本件発明1,2(請求項 1,2)の特許請求の範囲の記載に照らせば,旧特許法41条1項にいう先の出願「の願書に最初に添付した明細書又は図面・・・に記載された発明に基づ」いて特許出願されたものといい得るから,本件発明1,2については原告が優先権主張の効果を享受できなくなるいわれはなく,特許法29条の規定の適用につき,最先の優先日(…第1基礎出願の出願日)を基準として差し支えない。
ただし,前記取消事由1,2について判断したとおり,この日を基準時としても,本件発明1,2に係る特許については甲第12号証発明等に基づけば進歩性を欠いた無効なものである。

https://www.ip.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail?id=2857

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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