大阪地判平成18年(ワ)6162【無鉛はんだ合金】<山田>

 

*合金のクレーム上記載がない成分組成を含むイ号製品につき非充足とされた事例

 

★「不純物」の許容範囲は、発明の効果を妨げない範囲

 

例外的にそれが許容されるとしても,…合金の流動性向上に影響を与えないことが…予見し得るものに限られる。

 

(判旨抜粋)

…本件明細書の記載からすると,本件発明は…「Cu0.3~0.7重量%,Ni0.04~0.1重量%,残部Snからなる」組成の無鉛はんだ合金が…「金属間化合物の発生を抑制し,流動性が向上した」との性質を有することを見出した点にその技術的意義を有するものであると認められるが,一般に合金は,その成分組成が異なれば,その特性が大きく異なることが通常のことである。上記のように本件発明の成分組成が厳密に限定されているのは,このためであると考えられる。

これらの点からすると,本件発明は構成要件Aに記載される以外の成分組成を含むことを基本的に許容するものではなく,例外的にそれが許容されるとしても,せいぜい,そのようなものとして本件明細書において言及されている不可避不純物か,又はそれと同様に合金の流動性向上に影響を与えないことが特許出願時ないし優先日の技術常識に照らして容易に予見し得るものに限られると解するのが相当である。しかるところ,被告製品は前記のとおりAgを0.084%含有しており,これは,本件発明の特許出願時ないし優先日当時のJIS規格において,Sn-Cu系のはんだ合金において定められた許容不純物としての範囲(0.05%)を上回るものであるから,不可避不純物ということはできない。そして,特許出願ないし優先日の後にJIS規格が変更されたとしても,それはその時の技術常識や事情等に基づいて変更されたものと推認されるから,平成18年制定のJIS-Z3282においてSn-Cu系の鉛フリーはんだについてAgは0.10%以下と定められたとことをもって,Agを0.084%程度含有しても合金の流動性向上に影響を与えないことが特許出願時ないし優先日当時の技術常識に照らして容易に予見し得たと認めることはできないし,他にこれを認めるに足りる証拠はない。

 

 

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)