大阪地判令和4年(ワ)3374【微生物の生長制御方法】<松阿彌>

青色「光の照射」と「微生物の成長を抑制させる」ことの「直接的な関連性」を要求した。
⇒非充足(立証不十分。成長抑制は青色光でなく低温が理由であり得る。)

「【構成要件】…およそ400nmから490nmまでの光波長領域にある光の照射下で培養して、この微生物の生長を抑制させる…方法」

(判旨抜粋)
…「光の照射下で」の字義、本件特許に係る特許請求の範囲及び本件明細書の記載内容に加え、原告は、「光の照射下で」とは、枯草菌、 黄色ブドウ状球菌等の微生物に対して生長を抑制させる青色光が照射されていることを指す旨を主張していることに照らすと、構成要件Bにいう「光の照射下で」とは、青色光の照射の影響によって微生物の生長が抑制されていること(青色光の照射と微生物の生長抑制させることとの間に直接的な関連性があること)を要件としていると解するのが相当である…。…
主たる青色光源であるLED⑤が青色発光するのは、パーシャル室を(チルドではなく)微凍結パーシャル状態とし、かつオート急冷中のときであって、この場合、パーシャル室内は約-3℃から約-1℃に保たれることになるから、乙12ないし乙15の各実験の結果にみられるとおり、培地の一部や豚肉が凍結していたとする結果と整合的に理解できるものであり、乙12、13実験における黄色ブドウ球菌や枯草 菌のコロニーが見られなかったという結果も、黄色ブドウ球菌の一般的な増殖可能温度域は5~47.8℃(至適増殖温度は30~37℃)であり、枯草菌の一般的な増殖可能温度域は5~55℃(最適発育温度帯は20~45℃)であること(乙12、13に添付の参考資料)と矛盾なく理解することができる。…
本件製品が、…青色光の照射の影響によって微生物の生長が抑制されていること(光の照射と微生物の生長抑制させることとの間に直接的な関連性があること)を認めるに足りる証拠はない。したがって、本件製品の使用方法は、「光の照射下で」(構成要件B)を充足せず、本件発明の技術的範囲に属しない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/269/091269_hanrei.pdf

 

 

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執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
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