令和3年(行ケ)10157,10155【運動障害治療剤】<本多>

※有効成分と病名が同じであったが、対象患者を限定することで新規性・進歩性が認められた!!

<一致点>
有効成分
パーキンソン病動物を対象
L-ドーパと併用

<相違点1>
本件発明は、
「…ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動を示すに至った段階の患者」を対象とし、
「…ウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために前記患者に投与され」、
「…L-ドーパ療法」において投与される

Cf.(骨折抑制の)対象部位を(前腕部に)限定したが新規性が否定された令和3年(行ケ)10066、令和4年(ネ)10065<東海林>と対比して要検討。

⇒従来医薬品が当該「対象患者」「部位」に効くことを優先日当時の当業者が認識し得たか否かがポイント!!

(判旨抜粋)
本件優先日当時の当業者において、甲A1に基づき…KW-6002を本件相違点1に係る本件発明の用途(用法)に用いることに容易に想到し得たものと認めることはできない。…甲A2ないし甲A5は、いずれも本件相違点1に係る本件発明の構成(「前記薬剤」が「前記L-ドーパ療法におけるウェアリング・オフ現象および/またはオン・オフ変動のオフ時間を減少させるために」、「前記L-ドーパ療法」において投与されるとの構成)を開示し、又は示唆するものではない…。…
原告東和は、①本件優先日当時、ウェアリング・オフ現象はL-ドーパの薬効時間が短くなる現象であり、その原因はドーパミン作動系の異常であると認識されていたこと、②KW-6002の作用機序はL-ドーパ等のドーパミン作動性ではなく、別の作用機序に基づくものであることが本件優先日当時に広く知られていたことを根拠に、甲A1に接した当業者であれば、本件相違点1に係る本件発明の構成に容易に想到し得たと主張する。しかしながら、上記①の点については、…本件優先日当時の当業者は、ウェアリング・オフ現象やオン・オフ変動については、ドーパミンニューロンのドーパミン保持能の低下等やドーパミン受容体の感受性の低下のほか、L-ドーパの継続的な投与によって引き起こされる前シナプスや後シナプスにおける事象の関与も重要な発生原因たり得ると認識していたのであるから、…ウェアリング・オフ現象の原因が専らドーパミン作動系の異常であると認識していたということはできない。また、上記②の点については、…KW-6002を単独投与した場合、当該投与の24時間後において運動障害の明らかな回復がみられなかったにもかかわらず、…KW-6002の投与の24時間後にL-ドーパを投与した場合、その6時間後においてL-ドーパの作用が増強したとの結果を示すものであるから、…KW-6002がL-ドーパによる神経回路とは無関係に独自の作用をもたらすものと理解するとは考え難い。したがって、甲A1におけるKW-6002の作用機序につき、L-ドーパ等のドーパミン作動性ではなく、別の作用機序に基づくものであると当業者が認識したということはできない。

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/684/091684_hanrei.pdf

 

※本稿の内容は,一般的な情報を提供するものであり,法律上の助言を含みません。
執筆:弁護士・弁理士 高石秀樹(第二東京弁護士会)
本件に関するお問い合わせ先:h_takaishi☆nakapat.gr.jp(☆を@に読み換えてください。)